夜半に鳴る琉球の鐘

沖縄の片田舎にある小さな集落。そこには、古くから伝わる不吉な伝説があった。

夜半に、誰も触れるはずのない古い琉球の鐘が鳴り響くという。

そして、その音を聞いた者には、必ず翌日に不幸が訪れるというのだ。

その鐘は、集落の外れにある古びた祠の中に奉られていた。

かつて、この祠は村の守護神を祀る場所として神聖視されていたが、時が経つにつれて忘れ去られ、鐘だけが残された。

それでも、村人たちはその鐘の存在を恐れており、深夜には誰も祠の近くには近づかなかった。

ある月夜の夜、家族連れの村人である宮城一家は、その夜も特に何も変わらず、家族団らんのひとときを過ごしていた。

しかし、夜が更けると共に、突然、遠くから鐘の音が響いてきた。

「ゴーン…ゴーン…」

それは低く、深く、どこか悲しげな音だった。

宮城家の父親、健二はその音に気づき、すぐに家族を静かにさせた。

誰もが息を呑んで耳を澄ます。その音が次第に近づいてくるような錯覚さえ覚えた。

「この鐘の音を聞いてはならないと言われている。耳を塞ぎなさい」と健二は家族に指示したが、その言葉もむなしく、鐘の音は家全体を包み込んでしまった。

「ゴーン…ゴーン…」

音は何度も何度も鳴り響き、家族全員の心に不安を植え付けた。

幼い息子の翔太は、怖さのあまり泣き出してしまい、母親の美智子が必死に彼をなだめようとした。

しかし、鐘の音が続くにつれ、家族全員の心に不吉な予感が渦巻いていった。

翌朝、村人たちは宮城家を訪れたが、そこには誰もいなかった。

家は整然としており、まるで家族全員が一夜にして消えてしまったかのようだった。

村人たちは恐れおののき、鐘の伝説が現実となったことを悟った。

宮城一家の失踪から数日後、村の長老が村人たちに語った。

「あの鐘は、かつて戦で亡くなった者たちの魂が鳴らしているのだ。

彼らは未だに安らかに眠ることができず、この世に未練を残している。

そして、その音を聞いた者は、彼らの世界に引きずり込まれてしまうのだ。」

それ以来、村人たちは夜半の鐘の音を一層恐れるようになり、深夜に外出する者は一人もいなくなった。

祠の近くを通ることも禁じられ、その場所は次第に人々の記憶から消え去っていった。

しかし、ある満月の夜、村の若者が冒険心からその祠に近づき、ふと古びた琉球の鐘を見つけたという。

彼は恐る恐る手を伸ばし、鐘に触れるが、それは冷たく、鈍く響くだけだった。

何も起こらなかったことに安堵した若者は、その場を去った。

だが、その夜、再び村に鐘の音が響き渡った。

「ゴーン…ゴーン…」

それはまるで、失われた魂たちが再び目覚めたかのようだった。

そして翌朝、その若者の姿もまた、村から消えてしまっていた。

夜半に鳴る琉球の鐘。その音が再び村に響くとき、誰もが耳を塞ぎ、家の中に閉じこもる。

それは、何百年もの時を超えて伝わる、不吉で恐ろしい音だったのだ。

鐘の音が村から完全に消え去ることは、決してなかった。

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