徳島県美馬郡つるぎ町にある「犬の墓」は、かつて猟師・高清左右衛門が愛犬を弔うために建てたとされる場所である。この地には、愛犬が命を賭して主人を救ったという悲劇的な伝説が残されており、現在では徳島県内でも有名な心霊スポットとして知られている。今回は、犬の墓にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
犬の墓とは?

犬の墓とは、徳島県中西部、美馬郡つるぎ町一宇の国道438号線沿いに位置し、かつて猟師・高清左右衛門が愛犬の忠節に報いるために建立したと伝えられる墓である。
この場所は、延宝4年(1676年)ごろに起こった伝説に由来し、古くから地域に伝わる義犬伝説のひとつとして知られている。
高清左右衛門は、猟に従事する際、共に狩りに出た愛犬がしきりに吠え続け、何度となくなだめてもその鳴き声が止まらないのを目の当たりにした。
犬が狂ってしまったと錯覚した左右衛門は、愛犬の首を切り落とすという愚行に及んだ。
その瞬間、犬の首は風に乗るように対岸へ飛び、ひそかに左右衛門を狙っていた大蛇に噛みついた。
驚いた大蛇はその場から一目散に逃げ去った。
自らの愚かさと愛犬への裏切りを深く悔やんだ左右衛門は、最後まで自分の身を守ってくれた忠義の犬に感謝し、ここに墓を建てたと伝えられている。
さらに、墓の周辺には庚申塔や石仏が佇み、地蔵尊や七人塚といった他の霊的施設も存在することから、当該地域全体が古来より不思議な力に包まれていると考えられている。
犬の墓の心霊現象
犬の墓の心霊現象は、
- 夜中に犬の遠吠えが聞こえる
- 犬の姿をした霊がふと現れる
- 人間の呻き声や足音が不意に響く
- 墓周辺に謎の冷気と、誰かに見つめられている感覚を覚える
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、夜中に聞こえる犬の遠吠えは、周囲が静寂に包まれる中、突如として鳴り響くため、その不気味さは一層際立つ。
生きた犬の姿は確認されないにも関わらず、まるで亡き愛犬の霊が哀しみを訴えているかのような声が響くという報告が多い。
次に、墓の近くを歩くと、かすかな光のように犬の姿が目撃されるという現象がある。
これらは、透明感を帯びた幻影として現れ、あたかも墓を守護するかのような存在感を示す。
また、訪れた者は、ふとした瞬間に人間の呻き声や足音を感じることがある。
これらは、かつての悲劇の余韻として、左右衛門自身の後悔や苦悩が時を超えて伝わっているのではないかと考えられている。
さらに、墓周辺では、突如として冷気が走るとともに、誰かに見つめられているという異様な感覚に襲われることがある。
この視線は、確かに実体のないものから感じられるため、訪れる者に深い恐怖を与える。
犬の墓の心霊体験談
ある夜、徳島県内から訪れた一人の男性が犬の墓を訪れた際の体験が伝えられている。
夜の国道沿いは雑草に覆われ、墓はひっそりと存在しているにもかかわらず、男性は墓前で突如として遠くから犬の遠吠えが響くのを聞いたと語る。
その瞬間、彼は背後から不意に誰かの視線を感じ、振り返ると、薄暗い中に犬の霊のような影が一瞬だけ横切ったと証言している。
また、墓の近くで足音や人の呻き声が断続的に聞こえたという体験もあり、男性はその不気味な現象に戦慄し、すぐにその場を後にした。
この体験談は、長年にわたり口伝えで伝えられている伝説と重なり、現代においても犬の墓が持つ霊的な魅力と恐怖を如実に物語っている。
犬の墓の心霊考察
犬の墓におけるこれらの心霊現象は、高清左右衛門の悲劇的な行いと、愛犬への深い恩義が今なおこの場所に根付いている証左であると考えられる。
犬の遠吠えや幻影は、まるで亡き愛犬が自らの無念を訴え、また左右衛門の悔恨が永劫の闇に沈むかのような情景を演出している。
さらに、人間の呻き声や足音、そして冷気や視線の感覚は、事件当時の心情や、その場に漂った不吉なエネルギーが現代に伝わっていることを示唆している。
これらの現象は、単なる作り話や偶然の錯覚と断じるにはあまりにも多くの共通点が存在するため、地域に根付く伝説が実体を伴っている可能性を否定することは困難だ。
犬の墓は、単なる歴史的遺構に留まらず、愛犬への忠誠と人間の愚かさ、そしてその後悔が交錯する場所として、今なお多くの人々に恐怖と神秘を与え続けている。
コメント