鹿児島県肝付町にある小串トンネル。何の変哲もないこの短いトンネルには、昔から「子供の笑い声が聞こえる」「姿なき霊が現れる」といった不気味な噂が囁かれてきた。今回は、小串トンネルにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
小串トンネルとは?

小串トンネルは、鹿児島県肝付町に位置する全長180メートルのトンネルである。
1980年(昭和55年)に竣工され、周囲は深い自然に囲まれた閑静な山間部にある。
地元では「こぐしトンネル」と呼ばれている。昼間でも交通量は極めて少なく、トンネルの両端にはうっそうと生い茂る木々が広がり、人の気配がほとんど感じられない場所である。
特筆すべき歴史的事件や事故の記録は残っておらず、表面的にはごく普通のトンネルに見える。
しかし、ある時期からこの地に奇妙な噂が囁かれるようになった。
曰く、「子供の声が聞こえる」「姿なき霊が現れる」――小串トンネルは、いつしか“心霊スポット”として語られる存在となったのである。
小串トンネルの心霊現象
小串トンネルの心霊現象は、
- 少年の霊が現れる
- 子供の笑い声が聞こえる
- 明らかに無人のトンネル内から話し声がする
- 後方から声をかけられるが誰もいない
である。以下、これらの怪異について記述する。
少年の霊が現れる
小串トンネルを訪れた者の中には、トンネルの中央部でぼんやりと立ち尽くす少年の姿を目撃したという証言がある。
近づくとその姿は消えるが、消えた直後、身体の一部に冷たい空気がまとわりつくという。
中には少年と目が合った瞬間、強烈な頭痛や吐き気に襲われた者もいるというのだ。
子供の笑い声が聞こえる
ある夏の日、母子が小串トンネルを車で通過したときのことである。
運転していた母親が突然、「今、子供の声が聞こえなかった?」と問いかけた。
助手席の子供も確かに数人の子供たちの笑い声を聞いていたが、後続車は一台もなかった。
母親がその事実に気づいていたからこそ、わざわざ確認したのではないか――あの声は、どこから聞こえてきたのか、今となっては確かめようがない。
明らかに無人のトンネル内から話し声がする
深夜、小串トンネルを歩いて通過した男性がいた。トンネルの中ほどに差し掛かったとき、前方から話し声が聞こえてきた。
何を話しているかは不明であったが、間違いなく“誰か”がいた。だが、最後まで誰ともすれ違うことはなかったという。
後方から声をかけられるが誰もいない
ある肝試しに訪れた大学生グループの一人が、突然後ろから「待って」と声をかけられたという。
振り向いたが、そこには誰もいなかった。
仲間はすでにトンネルの出口付近におり、その声が聞こえるはずもなかった。
彼はその瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われたと語っている。
小串トンネルの心霊体験談
以下に紹介するのは、実際に小串トンネルで起きたとされる体験談である。
「私がまだ子供の頃、母と車で小串トンネルを通ったときのことです。トンネルに入った直後、確かに後ろから子供の笑い声が聞こえてきました。最初は、後続車の中に子供が乗っていて、その声が漏れてきたのだと思っていました。ですが、数分後、母がぽつりと『今、子供の声がしなかった?』と聞いてきたのです。私は驚きました。母にも聞こえていたのです。しかしその時、ふと母の表情に違和感を覚えました。なぜ母は、そんな当たり前のことを確認してきたのか…。そのとき、後ろに車は一台もなかったのです。」
この体験談は、単なる錯覚とは言い切れない。
複数人が同じ“声”を同時に聞いたという事実こそが、最も恐ろしいのではないだろうか。
小串トンネルの心霊考察
小串トンネルには、重大な事故や事件の記録は確認されていない。
にもかかわらず、なぜこれほど多くの心霊現象が語られているのか。
その理由は今もって明確ではない。
一説には、トンネルの近隣に旧日本軍の特攻兵器「回天」の発射基地跡が存在することが関係しているとも言われている。
しかし、実際には小串の回天基地からの出撃記録は存在しておらず、直接的な因果関係は見出せない。
また、周囲に点在する廃墟、昼間でも薄暗い林道、そして人気のない立地が人々の恐怖心を刺激し、“何かがいる”という感覚を引き起こしているのかもしれない。
特に、旧照明時代のオレンジ色の薄暗い明かりの下では、不気味さがより際立っていたという証言もある。
さらに、心理的な要因として「トンネルという閉鎖空間」「薄暗い照明」「無音に近い静けさ」が、人間の脳に幻聴や幻覚を生み出しやすくするとも考えられる。
トンネル内で聞こえた笑い声や話し声は、タイヤ音や風の音が偶然そう聞こえただけなのかもしれない。
しかし、実際に“誰か”の気配を感じた者が存在することもまた否定できない。
根拠なき噂が人の恐怖を育て、やがて心霊現象を引き寄せる――小串トンネルは、そんな“心霊スポットの成り立ち”を象徴する場所なのかもしれない。
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