北木島沖に浮かぶ無人島、ヨコ(海の火葬場)は、明治時代より疫病や事故で亡くなった者たちを露天で焼いた場所として知られている。波にさらわれ放置された遺骨、黒く変色した岩場、そして今もそこに留まる怨念が、数々の不可解な現象を引き起こしているという。今回は、ヨコ(海の火葬場)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
ヨコ(海の火葬場)とは?
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ヨコは、岡山県笠岡諸島の北木島と白石島の間に位置する小島である。
正式には横辺島(よこべじま)と呼ばれ、島全体が平坦な地形であることから「ヨコ」と通称されている。
近くには岩山で構成される小島「縦島(タテ)」もあり、これら二つは古くから対をなす存在で語られてきた。
この島々は、明治時代にコレラなどの疫病が流行した際、感染拡大を防ぐために死者を荼毘に付した露天火葬場であった。
遺体は木組みのやぐらに載せられ、松ヤニを燃やして炎を上げながら焼かれ、その灰は波にさらわれるまま放置されたという。
こうした野焼きは、感染者ばかりでなく、北木島の石切場で事故死した出稼ぎ労働者の亡骸にも施されていた。
そして、その風習はなんと平成の頃まで細々と続いていたとも伝わる。
現在、ヨコは火葬場としては使われていないが、許可を得れば船で上陸することが可能である。
しかし、島は縦島以上に急峻な岩場に覆われ、海が少し荒れるだけでも接岸は困難となる。
島を歩いて回ることも半周程度が限界であり、火葬跡も判然としない。
だがその陰鬱さは、今なお強烈な死の気配を漂わせている。
ヨコ(海の火葬場)の心霊現象
ヨコ(海の火葬場)の心霊現象は、
- 黒く変色した岩場の隙間から現れる、正体不明の霊影
- 海面に漂う、灰のようにぼやけた顔がこちらを見つめる
- 夜になると、どこからともなくすすり泣く声が響く
- 海底から白い手が伸び、船を引き寄せようとする
である。以下、これらの怪異について記述する。
黒く煤けた岩場は、火葬の跡が今なお消えぬ証である。
そこに近づくと、岩の裂け目から薄く白い影が立ち上がり、静かにこちらを見つめるという。
振り返った瞬間には既に消えているが、その場を離れた後もずっと背後に視線を感じるという話が後を絶たない。
また、風の止んだ静かな海面には、人の顔のようにぼやけた灰色の模様が浮かび上がり、ゆっくりとこちらを追いかけてくる。
双眼鏡で覗くと、それは確かに眼や口を持った顔のようであり、気味の悪さに慌てて視線を逸らした者もいる。
夜になると、無人の島からか細いすすり泣きが届く。
海風に乗って幾重にも反響し、まるで自分のすぐ耳元で泣かれているかのような錯覚に陥る者も少なくない。
そして最も恐ろしいのは、波間から白い手が伸び、船の舷側を掴んで引こうとする現象である。
これに遭遇した漁師は、血相を変えて船を急旋回させたといい、再びその海域には近づかなくなった。
ヨコ(海の火葬場)の心霊体験談
実際にヨコへ渡った者の中には、帰りの船で異変を感じた者がいる。
エンジンの調子が突如悪くなり、進まなくなったのだ。
ふと海面を見ると、数本の白い腕のようなものが波間を漂い、確かに船底へ伸びていたという。
慌てて船長が舵を切ると、その瞬間に腕は掻き消え、再びエンジンも正常に戻った。乗っていた者は皆、恐怖で声も出なかったという。
ヨコ(海の火葬場)の心霊考察
ヨコに残る心霊現象は、長年この地で焼かれ、海に散った無数の魂の名残ではないだろうか。
火葬された遺骨は収骨されず、波に洗われるがままに放置された。
それは弔いとしてはあまりにも粗末であり、行き場を失った霊が今も海辺や岩陰を彷徨っているとしても何ら不思議ではない。
また、疫病や事故で急逝し、志半ばでこの地に連れて来られた者たちの無念は深い。
黒く煤けた岩、泣き声、海面の顔、船を引く手……これらは全て、忘れ去られることを拒むかのように現世に痕跡を残そうとする、悲しみと怨念の表れであるのかもしれない。
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