広島県世羅町に位置する京丸ダムは、一見穏やかな農業用水のダムである。しかしこの地には、湖面に浮かぶ人影や闇夜に響く呼び声など、数々の心霊の噂が絶えない。さらに過去には一家四人と一匹の犬が謎の死を遂げた陰惨な事件も起きており、この場所を単なる景勝地とは呼べない理由がそこにあるという。今回は、京丸ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
京丸ダムとは?

京丸ダムは、広島県世羅郡世羅町京丸にある、堤高25.5m、堤頂長117mの重力式コンクリートダムである。
1996年に農林水産省によって完成し、その役割は世羅町一帯の野菜生産施設や果樹園への灌漑用水の供給にある。
二つの川の合流点に築かれているため、ダム湖はV字型を成し、貯水効率が高い。
総貯水容量は499千㎥と中規模で、普段は静かで穏やかな景観を見せる。
しかし、この場所には暗い影が差している。
平成14年、この湖底から一家4人の遺体が乗った車が引き上げられたのだ。
京丸ダムの心霊現象
京丸ダムの心霊現象は、
- 湖面に正体不明の人影が浮かび上がる
- 夜中、堤体下から誰かに呼ばれるような声が聞こえる
- 湖畔を散策していると、何者かの足音が背後からついてくる
- 湖面に白い服を着た女が立っているのを見たという目撃談
である。以下、これらの怪異について記述する。
湖面に浮かぶ正体不明の影は、京丸ダムで命を落とした人々の怨念ではないかと噂される。
夜、ダム下の減勢池付近を歩くと、確かに耳元で名前を呼ばれたような気配がするという。
振り返っても誰もいないのだ。
堤体を見上げると、暗闇の中で白い服をまとった女が立ってこちらを見下ろしていたという話がある。
次の瞬間、女は霧のように消え、足元には冷たい風だけが残った。
また、湖畔を散歩する釣り人の背後から足音がついてきたかと思うと、突然肩を叩かれた。
しかし振り返ってもそこには何もいなかった。
こうした体験談は一度や二度ではなく、地元では京丸ダムには“何か”がいると長年囁かれている。
京丸ダムの怪異事件
平成14年9月7日、京丸ダムの湖底に沈む車が発見された。
中には、前年6月4日から忽然と姿を消していた山上政弘さん(58)、妻・順子さん(51)、長女・千枝さん(26)、母・三枝さん(79)、そして愛犬のレオの遺体があった。
一家は家を出る際、パジャマ姿にサンダル履き、もしくは裸足であったと推測されている。
自宅の台所には翌朝の朝食が虫除けネットに掛けられたまま置かれ、旅行に行くはずだった妻・順子さんの荷造り済みのバッグが手付かずで残っていた。
京丸ダムの堤防からは車止めが設置されており、通常では進入できない。
転落した車は堤防から約50メートル先の湖底に沈んでおり、事故の可能性は極めて低いとされた。
現場で引き上げられた車内の一家は、まるで互いに手を繋いでいるかのように座っていた。
死因は溺死。目立った外傷はなく、シートベルトは締められたままであった。
これらの事実は、意識のある状態で沈む車内にいたならば、どれほど恐怖と苦痛に苛まれたかを想像させる。
家族全員が覚悟の上だったのか、あるいは既に眠らされていたか、はたまた何かに連れ去られるようにして湖へ向かったのか。
その真相は、今も闇の中である。
京丸ダムの心霊体験談
京丸ダムを訪れたある男性の話である。
彼は友人と共に夜釣りをしようとダムを訪れた。
堤体下に車を停め、ヘッドライトを消すと、辺りは漆黒の闇に包まれ、ただ水面がわずかに月光を反射していた。
準備を整え竿を投げ入れた矢先、背後から「カシャン」という金属音が聞こえた。
不審に思いライトを照らすが、そこには誰もいない。
ただ冷たい風だけが頬を撫でて通り過ぎていった。
その後も妙な違和感は続いた。
水面をじっと見つめていると、遠くに白いものが立っているのが見える。
最初は釣り人のウェアが反射しているのかと思ったが、どうも様子がおかしい。
ライトを向けた瞬間、それは音もなくスッと消え、同時に全身の毛穴が総立ちになった。
さらに友人は急に頭痛を訴え出し、顔色を真っ青にして「ここに長くいたくない」と言い出した。
その後、二人は早々に荷物をまとめダムを後にしたが、帰りの車中でも原因不明の吐き気に襲われ続けたという。
以来、その男性は「京丸ダムにはもう二度と近づきたくない」と語っている。
何気ない夜釣りのつもりが、あの場所では確かに“何か”に見られていたのだ。
京丸ダムの心霊考察
この不可解な事件は単なる無理心中なのだろうか。
車内には睡眠薬や酒の痕跡もなく、遺書も残されていなかった。
一家が自ら湖へ向かったにしては、あまりにも多くの違和感が残る。
京丸ダム周辺には「神隠し」の伝承がある。
近くの大将神山には、美しい使用人お夏が忽然と消えたという話が残っており、その山はかつて山上家の所有地であった。偶然にしてはあまりにも出来すぎた因縁である。
一家が消えた晩、午後10時50分に近所で車のドアが閉まる音がしたというが、その後の一家の行動は誰にも分からない。
翌朝4時には既に政弘さんの車は無く、全ては静かに消え去っていた。
このダムに現れる霊の数々は、一家の怨念か、あるいはもっと古い土地の呪縛かもしれない。
無念の死を遂げた者たちの声は、今も湖底から這い上がり、静かな水面に白い人影となって現れるのかもしれない。
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