愛媛県砥部町にある満穂トンネルには、深夜になると奇妙な霊の噂が絶えないという。今回は、満穂トンネルにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
満穂トンネルとは?

満穂トンネルは、砥部町の上尾峠に位置する三連続の隧道である。
第一から第三まで並ぶその姿は「トンネル三兄弟」と呼ばれ、最も短い長男、長さも中間の次男、そして最も長い三男という順に並んでいる。
上尾第一トンネル:長さ73m、1977年竣工。最北端にあり最も短い。
上尾第二トンネル:長さ143.7m、1975年竣工。中間に位置し延長も中間。
上尾第三トンネル:長さ270m、1976年竣工。最も南側にあり最も長い。
いずれも歩道はなく、車道のみが伸びている。
昼間は何の変哲もない峠道であるが、夜になるとこの場所は一転して異様な気配に包まれるといわれている。
また、満穂トンネルという名称は所在地である砥部町満穂に由来している。
満穂トンネルの心霊現象
満穂トンネルの心霊現象は、
- 夜中に一人で車を走らせると、後部座席に女性の霊が現れる
- その霊は三連続トンネルを抜けるまで乗り続け、通過すると忽然と姿を消す
- 消えた後、後部座席には水が滴った跡が残されている
である。以下、これらの怪異について記述する。
最も有名な現象は、深夜にドライブ中の車に女性の霊が乗り込むというものである。
振り返れば蒼白な女の姿がじっとこちらを見つめ、声をかけることもなく座席に居座るという。
その存在は第一トンネルから現れるとされ、第二、第三と通過する間も決して降りることはない。
そして三つのトンネルを抜けた瞬間、気づけば女は消えている。
しかし安心できるわけではない。
彼女が座っていた後部座席には水滴が垂れ落ちており、まるで濡れた体を持つ者がそこに腰かけていたかのような痕跡が残されるのである。
この水の正体は不明であるが、古くから「溺死者の霊ではないか」「峠で命を落とした女の成れの果てではないか」と囁かれてきた。
満穂トンネルの心霊体験談
ある深夜、単独でこのトンネルを通過した男性はこう証言している。
第一トンネルに入った直後、ふとルームミラーを覗くと、後部座席に長い髪の女性がうつむいて座っていた。
慌てて振り返ったが、彼女は無言のまま動かない。恐怖に凍りつきながらも車を止めることはできず、そのまま第二、第三トンネルを通過した。
やがて出口の光が見え、最後のトンネルを抜けた瞬間、後部座席は空になっていた。安堵と同時に背筋を冷やしたのは、シートにびっしょりと濡れた跡が残っていたことであった。
まるで「確かにここに座っていた」と告げるかのように。
満穂トンネルの心霊考察
この三連続トンネルに現れる女性の霊は、一時的に車へ同行する“同乗型の幽霊”といえる。
三つの隧道を抜けるまで降りないという特徴は、何らかの因縁がこの道筋そのものに結びついている可能性を示している。
また、霊の痕跡として残る「水」は重要である。単なる幻覚ではなく、物理的な現象を伴うことは強い霊的干渉を意味する。
かつてこの峠で水難事故や女性の変死事件があったのではないかと考える者も少なくない。
満穂トンネルは昼間に通ればただの峠道にすぎない。しかし夜、ひとりでこの道を抜けるとき、後部座席には決して目をやってはならない。
そこには“濡れたままの彼女”が、静かに座っているかもしれないからである。
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