愛媛県四国中央市にある「身投げの崖(姫ケ嶽)」には、戦国時代の悲劇にまつわる恐ろしいウワサが語り継がれている。今回は、身投げの崖(姫ケ嶽)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
身投げの崖(姫ケ嶽)とは?
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身投げの崖(姫ケ嶽)は、かつて川之江城を舞台に繰り広げられた戦乱の歴史と深く結びついた断崖である。
1582年6月10日、川之江城主・川上但馬守は三島神社参拝の帰途に家臣の裏切りによって命を奪われた。
その後、城は敵軍に攻め込まれ落城。
愛娘であった年姫(としひめ)は、父の無念を知り、後を追うように愛馬を駆って城山の断崖から海へと身を投げた。
わずか十代半ばであったと伝わる。
その遺体は香川県観音寺市の浜へ流れ着き、村人の手で葬られた。
その浜は「姫浜」と呼ばれるようになり、姫が飛び込んだこの崖は「姫ケ嶽」と呼ばれるようになった。
歌人・与謝野晶子もこの悲話を聞き、短歌に詠んでいる。
しかし、この崖には単なる伝承では終わらない、今もなお続く心霊の噂が存在している。
身投げの崖(姫ケ嶽)の心霊現象
身投げの崖(姫ケ嶽)の心霊現象は、
- 夜になると、白い着物姿の姫が崖に立ち、海を見下ろしている姿が目撃される
- 女性のすすり泣きが風に混じって聞こえる
である。以下、これらの怪異について記述する。
もっとも有名なのは、姫の霊の目撃談である。
深夜、崖際に佇む白装束の女性の影が確認され、ふと目を離すと姿は消えている。
だが、その場に立つと急に足元が引かれるような感覚に襲われるという。
また、誰もいないはずの崖の上で、馬の蹄の音が響くことがある。
それは年姫が愛馬と共に飛び込んだ最後の瞬間の再現とも囁かれている。
海面からは何も落ちていないのに、夜な夜な水を叩くような重い音が繰り返される。
これは姫が海に身を投げた瞬間の残響だと信じられている。
さらに、耳を澄ますと、風に混じって女性の泣き声が漂うという証言もある。
声は途切れ途切れで、助けを求めるかのように聞こえると語られている。
身投げの崖(姫ケ嶽)の心霊体験談
ある地元住民の体験によれば、夜に友人と肝試しで訪れた際、崖の下から何度も「ドン」という水音が響き、全員が足を止めた。
怖くなり帰ろうとした時、背後から「待って…」という女性の声がはっきりと聞こえ、数人が恐怖で腰を抜かしたという。
別の人物は、崖の上で写真を撮った際、白い影のようなものが写り込み、その場にいた誰もが血の気を失ったと証言している。
その写真はすぐに消去したが、数日間は夜になると夢の中に泣き声が響いたという。
身投げの崖(姫ケ嶽)の心霊考察
身投げの崖に残る霊現象は、年姫の壮絶な最期が深く関わっていると考えられる。
父の死を知り、武士の娘としての誇りと絶望の狭間で身を投げた無念は、時を越えてなお消えることがない。
白い影、馬の蹄の音、水音、すすり泣き……これらは全て、姫の最後の瞬間が延々と繰り返されているかのようである。
つまり、この地そのものが年姫の「怨念の記憶」に支配されているといえよう。
訪れる者が霊を見聞きするのは偶然ではなく、姫がその存在を伝えようとしているのかもしれない。
身投げの崖はただの史跡ではなく、今もなお戦国の悲劇が生き続ける心霊の舞台なのである。
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