嘆きの森のウワサの心霊話

高知市の山中にひっそりと佇む“嘆きの森”――。そこは、明治のコレラ流行で命を落とした者、そして昭和の空襲で焼かれた無数の遺体が埋められた場所であるといわれている。今回は、嘆きの森にまつわるウワサの心霊話を紹介する。


嘆きの森とは?

嘆きの森の外観

高知市南部の筆山から皿ヶ峰、鷲尾山へと続く丘陵地帯。

その中腹に「北中山」と呼ばれる一帯がある。

明治以降、何度も流行したコレラの死者を葬った場所であり、通称「コレラ墓」と呼ばれてきた。

しかし、この地に真の“嘆き”が刻まれたのは、1945年7月4日――高知大空襲の日である。

米軍B29爆撃機125機による空襲で20万発の焼夷弾が降り注ぎ、市街地は一夜にして炎の海と化した。

防空壕に逃げた者は蒸し焼きにされ、防火用水に首を突っ込んだまま息絶えた者もいたという。

黒焦げとなった遺体は鏡川の河畔に並べられたが、誰のものか判別もつかず、百体を超える遺体が引き取り手もないまま夏の陽光に晒された。

うじがわき、蠅が群がる中、数日後に火葬された遺体は北中山に埋葬され、その地は“嘆きの森”と呼ばれるようになった。

しかし、戦後その土地は「市有地」ではなく「私有地」として払い下げられ、追悼の看板は撤去された。

かつて百余の無名の遺体が眠るその場所は、やがて芋畑と化したのである。


嘆きの森の心霊現象

嘆きの森の心霊現象は、

  • 夜になると、森の奥から呻き声のようなものが聞こえる
  • 森を抜けるハイカーの背後に、焼けただれた影がついてくる
  • 写真を撮ると、無数の白い手のようなものが写り込む
  • 足元から“湿った息”のような冷気が吹き上がる

である。以下、これらの怪異について記述する。

嘆きの森は、昼間こそ静寂に包まれているが、夜になると空気が一変する。

木々の間を通り抜ける風は妙に湿り、まるで誰かの泣き声のように揺れる。

かつて焼け爛れた遺体が葬られたと伝わる場所では、土中から「骨のかけら」が見つかるという噂が絶えない。

山肌に刻まれた古い段々畑の跡――それが、かつて芋畑として耕された痕跡である。

芋を掘るとき、地面から白い骨のようなものが現れたという話も残る。

誰のものかも分からぬ骨を掘り起こした夜、家に戻ると、耳元で「返してくれ…」という声がしたという。

さらに、焼夷弾で焼け焦げた木の根元には、人の顔のような焦げ跡が現れるともいわれている。

その顔は見る者によって表情を変え、笑っているようにも、泣いているようにも見えるという。


嘆きの森の心霊体験談

登山愛好家のA氏が、皿ヶ峰から鷲尾山を縦走した際のことである。

森の分岐点に「嘆きの森」と書かれた焼け焦げた案内板を見つけ、写真を撮ろうとした瞬間、背後から「ガサ…ガサ…」と落ち葉を踏みしめる音が近づいてきた。

誰かがいると思い振り向いたが、そこには誰もいなかった。

その夜、A氏は宿泊先で撮った写真を確認して凍りついた。

看板の脇、木の陰から焦げたような黒い腕がのび、カメラを掴むように写っていたのである。

翌朝、A氏は再び現地を訪れたが、森は不気味なほど静まり返っており、足音すら吸い込まれるように消えていったという。


嘆きの森の心霊考察

嘆きの森が放つ異様な気配は、偶然や思い込みでは説明がつかない。

明治期のコレラによる死者、そして大空襲で焼かれた無数の遺体――二重の悲劇が重なった地であることは確かである。

慰霊碑ひとつ建てられぬまま、遺骨の上に畑を作り、作物を育てたという現実。

それは供養を断たれた魂の“嘆き”を生み出したのではないか。

ハイカーの間で「この森では鳥が鳴かない」とも言われている。

自然の沈黙そのものが、まるで亡者の静寂のように、訪れる者の心を締めつけるのだ。

嘆きの森――その名は偶然ではない。

それは、焼け焦げた者たちがいまも訴え続ける声の名残なのである。


嘆きの森の地図

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