佐賀県の山中に潜む、静けさと異様な気配が交錯する黒髪山。信仰の対象とされるこの霊山に、なぜ心霊の噂が絶えないのか――今回は、黒髪山にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
黒髪山とは?

黒髪山(くろかみやま)は、佐賀県武雄市と有田町との境にそびえる標高516メートルの山であり、「新日本百名山」および「九州百名山」にも選ばれている名峰である。
山頂には「天童岩」と呼ばれる巨大な岩があり、奇岩群が織りなす景観から「肥前耶馬渓」とも称されている。
この山は古来より信仰の対象とされ、鎌倉時代には山伏の修行場として名を馳せていた。
弘法大師空海とも縁が深く、黒髪山で祈願し唐へと渡ったという伝説も残されている。
黒髪山上宮に祀られる神は、神代の昔、イザナミノミコトが黒髪を切り捨てたことで山の姿に変じたという異様な神話に基づく。
また、山内には「黒髪神社」「西光密寺」「乳待坊公園」など、宗教色の濃い史跡が点在しており、古代から現代に至るまで多くの信仰と伝承に包まれてきた霊域である。
黒髪山の心霊現象
黒髪山の心霊現象は、
- 山中に女性の霊が出る
- 乳待坊公園展望台で白い服の女性が現れる
- 登山中に誰もいないのに背後から足音が聞こえる
- 鎖場付近で人影が岩陰に消えるのを目撃する
である。以下、これらの怪異について記述する。
黒髪山のもっとも有名な心霊スポットは、山頂付近の「乳待坊公園展望台」である。
ここでは、白い服を着た女性の霊が佇んでいる姿が繰り返し目撃されている。
この女性については、ロッククライミング中に転落して命を落とした者であるという説や、心を病んでこの山で自ら命を絶った者であるという説がある。
彼女の霊は決して大声を出したり、追いかけてきたりはしない。
ただ、景色を見つめている。何かに別れを告げるかのように――。
また、登山道を進む最中、背後からはっきりと足音がついてくるにもかかわらず、振り返っても誰もいないという体験を語る登山者は後を絶たない。
その足音は、一定の間隔で踏みしめられ、まるで“ついてくる”かのように感じられるという。
さらに、頂上へと続く鎖場付近では、岩陰にスッと人影が入っていくのを見たという証言がある。
だがその先には行き止まりしかなく、人が隠れるような場所など存在しない。あれは本当に“人”だったのか、それとも…。
黒髪山の心霊体験談
実際に黒髪山を訪れた登山者の一人が語った体験がある。
西光密寺ルートを選び、乳待坊公園展望台を経由して頂上を目指していたときのことだ。
霧が立ちこめる展望台にさしかかったとき、ふと視線の先に白いワンピースを着た女性が立っていた。
長い黒髪を風に揺らしながら、まるで自分の到着を待っていたかのように。
「こんにちは」と声をかけようとした瞬間、その姿はふっと掻き消えるように消えたという。
残ったのは、湿った空気と、どこからともなく漂う線香の匂いだけだった。
この登山者は、それから何度も同じ場所を訪れたが、あの女性には二度と会えなかったという。
黒髪山の心霊考察
黒髪山は、その地形や宗教的背景からみても、強い“場の力”を持つ土地であると言える。
古くから修験者の修行場とされ、荒行の末に命を落とす者も多かった。
また、現代に至っても、険しい登山道での転落事故や自殺の噂がある。
特に乳待坊公園展望台という場所は、広く視界が開け、周囲から孤立しているため、精神的に揺らいだ者が“引き寄せられやすい”地点なのかもしれない。
そして何より、この山に根付く「神と死」の混在こそが、心霊現象の源となっているのではないだろうか。
神聖であるがゆえに、俗世の穢れを嫌い、その存在を警告として現す霊たち――。
黒髪山は、ただの霊山ではない。
祈りと怨念が交錯する、境界線上の山である。
コメント