鹿背隧道のウワサの心霊話

山口県萩市にある鹿背隧道は、明治期に建造された石造トンネルであり、現在は国の登録有形文化財にも指定されている。しかしその歴史的価値の裏側には、処刑場跡が隣接することから心霊のウワサが絶えない。今回は、鹿背隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。


鹿背隧道とは?

鹿背隧道の外観

鹿背隧道(かせずいどう)は、かつての萩往還、悴坂垰の下をくぐるように掘られた、全長182メートルの石造トンネルである。

明治16年に着工され、17年に竣工。

当時としては日本最長の石造隧道であり、建築の精密さと歴史的価値の高さから、現在は国の登録有形文化財に指定されている。

幅4.2メートル、高さ約3.9メートルと、現代の普通車でも通行可能な規模であるが、内部には照明や保安設備は一切存在せず、昼夜を問わず真の闇が支配する。

特に隧道中央部では、外の光が完全に遮断されるため、目を開けていても閉じていても、そこにあるのは漆黒のみという異様な体験を強いられる。

このトンネルの北側――すなわち萩市方面には、かつて「大屋処刑場」が存在していた。

その事実が、この地をただの歴史的構造物ではなく、忌まわしい記憶の地として染め上げている。


鹿背隧道の心霊現象

鹿背隧道の心霊現象は、

  • 女性の霊が現れる
  • 「あのー」といった声が聞こえる
  • 男性のうめき声が聞こえる
  • 誰もいないのに、声がトンネル内に響き渡る

である。以下、これらの怪異について記述する。

この隧道で最も多く語られているのが、「女性の霊」の存在である。

姿を見た者は少ないものの、真夜中にトンネルを歩くと、背後から「…あのー、ちょっといい?」という、女の声が耳元に近づいてくるという報告がある。

振り返っても、そこには誰もいない。ただ、声だけが確かに、空気を震わせている。

また、深夜に訪れた者が「低い声で男がブツブツと呟いていた」と証言しており、その音は周囲の静寂の中でトンネルの壁を反響していたという。

だが同行者はその音をまったく聞いておらず、声はその者にだけ聞こえていたようだ。

さらに、トンネル内部で突然「誰かの声が響くように聞こえた」という報告も多い。

周囲には誰もおらず、車も通っていない。

にもかかわらず、まるで壁の奥から「何か」が話しかけてくるような、そんな奇怪な体験をした者が複数存在している。


鹿背隧道の心霊体験談

ある者は、日没後にこの隧道を懐中電灯ひとつで歩いて通過しようとした。

中ほどに差しかかると、トンネルのどこからか「ちょっといいですか…」という声が響いた。

聞き間違いかと思ったが、次の瞬間、まるで誰かが真後ろに立っているかのような気配を感じたという。

慌てて振り返っても、当然そこには誰もいない。

ただ、懐中電灯の光に浮かび上がった石壁が、妙に湿っていたという。

背筋が凍る思いで早足で通り抜けたが、その後もしばらくは、耳元にささやき声の残響が残っていたとのことだ。


鹿背隧道の心霊考察

鹿背隧道の心霊現象は、いずれも音や気配といった「感覚」を通じて訪れるものである。

これは、霊的存在が物理的に姿を現すよりも、より深く心理に干渉してくることを意味しているのではないか。

また、北側に位置する「大屋処刑場跡」の存在も見逃せない。

かつて、この地で罪人たちが最期を迎えた歴史がある。

悴坂(かせがさか)という地名には、「憔悴(しょうすい)」の意味が込められているとされ、まさに死出の旅路を象徴する場所であった可能性が高い。

闇に包まれた隧道内で聞こえる囁きや呻きは、果たして風の音なのか、それとも処刑場へと送られる途中、無念の想いを抱えた者たちの断末魔の記憶なのか――。

鹿背隧道は、単なる歴史的構造物ではなく、土地に染み付いた「過去」が今なお息づいている場所である。

夜間に立ち入る者は、その闇に潜む何かと、知らずに対峙することになるだろう。


鹿背隧道の地図

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【管理人】狐憑きのたる

全国のウワサの心霊スポットを調査し、その魅力と恐怖を皆さんにお届けしています。