鹿児島市天保山町にある天保山公園には、古くから戦争、悲恋、空襲といった数多の悲劇が積み重なっており、今もなお不可解な心霊現象が語り継がれているという。今回は、天保山公園にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
天保山公園とは?

天保山公園は、鹿児島市天保山町にある公園である。
甲突川の河口付近に広がり、静かな松林や広場を有し、昼間は市民の憩いの場として親しまれている。
しかし、この穏やかな風景とは裏腹に、この地には数多の曰くが積み重なっている。
天保山とは、江戸時代の天保年間(1830〜1844年)、甲突川の改修工事で生じた土砂を使い、海を埋め立てて築かれた人工の山である。
山の名はその時代に由来し、幕末には砲台が設置され、文久3年(1863年)に勃発した薩英戦争の舞台ともなった。
また、戦前には天保山大橋を渡った先に赤線地帯が存在し、逃げ延びた遊女が天保山で自ら命を絶った、あるいは軍人と駆け落ちして心中したとの噂も伝えられている。
さらに、太平洋戦争中の鹿児島空襲の際には、多くの焼死体が甲突川を流れ着き、この地で荼毘に付されたという。
このように、天保山公園は、血と涙と無念の記憶が折り重なった歴史を抱える土地なのである。
天保山公園の心霊現象
天保山公園の心霊現象は、
- 松林に現れる女性の幽霊
- 甲突川で目撃される溺れる学生の霊
- 夜中に誰もいないグラウンドから聞こえる笑い声
- 遊郭の遊女の霊が現れ、名前を呼ぶ声が聞こえる
である。以下、これらの怪異について記述する。
松林に現れる女性の幽霊
天保山公園の松林では、夜になると白い着物をまとった長髪の女性の霊が彷徨う姿が目撃される。
誰もいないはずの林の奥から、かすかな足音や嗚咽が聞こえることもある。
姿を見かけた者の中には、直後に体調を崩した者や、夢の中に女性が現れるようになったという証言も存在する。
甲突川で目撃される溺れる学生の霊
公園に隣接する甲突川では、助けを求める声とともに水中で手を振る若い男性の姿が確認される。
しかし助けに近づくと、姿は一瞬でかき消える。
実際には過去にこの場所で学生が命を落とした記録があり、その霊が今も彷徨っているのではないかと恐れられている。
夜中に誰もいないグラウンドから聞こえる笑い声
深夜、公園内のグラウンドから子どもとも大人ともつかぬ甲高い笑い声が響くという。
周囲には誰もおらず、照明の落ちた暗闇の中でその声は次第に近づいてくる。
音の主は不明で、確認に向かった人が帰ってこなかったという話も囁かれる。
遊郭の遊女の霊が現れ、名前を呼ぶ声が聞こえる
戦前に存在した遊郭で悲しい運命をたどった遊女たちの霊が、この地に今も留まり、夜な夜な名前を呼びながら男性の耳元で囁くという。
耳元で女性の声が聞こえ、振り返っても誰もいないという怪異は、公園周辺の常連からも証言されている。
天保山公園の心霊体験談
ある地元の女性は、夜にジョギングで公園を通った際、松林の中で白い服の女が木の陰に立っていたのを目撃したという。
目が合ったと思った瞬間、その姿は霧のようにかき消えた。
彼女はその日以来、誰もいない部屋から女のすすり泣く声が聞こえるようになり、ついには引っ越すことを決めたという。
また、ある男子学生は友人たちと肝試しに訪れた際、甲突川のほとりで水面に浮かぶ手を見た。
慌てて引き返そうとしたところ、自分の名前を呼ぶ声が川面から響いたと証言している。
以降、その学生は水のある場所を極端に恐れるようになった。
天保山公園の心霊考察
これらの心霊現象を総合すると、天保山公園という地が抱える「未浄化の想念」の蓄積が浮き彫りになる。
遊女の悲哀、戦火に巻き込まれた無念、突然の死を迎えた若者たちの執念。
それらは風化することなく、この地の空気に染み込み、今もなお訪れる者に影を落としている。
甲突川の水は時に静かに、時に不気味な音を立てて流れるが、それはもしかすると、忘れ去られた死者たちの嘆きの声かもしれない。
天保山公園は、単なる都市の緑地ではなく、記憶と怨念が交差する「霊の交差点」となっている可能性があるのである。
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