広島県呉市にかつて存在した廃墟、「猫屋敷」。その場所には、かつて老爺と一匹の猫が暮らしていたという。時を経て、そこは数多の怪異が語られる心霊スポットとなった。今回は、猫屋敷にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
呉市の猫屋敷とは?

猫屋敷とは、広島県呉市広長浜の海岸沿いに建てられたコンクリート製の三階建て廃墟である。
建物は1970年代前半に建設されたとされ、小規模な宿泊施設のような外観であったが、実際は別荘として利用されていたとの説が有力である。
米軍の広弾薬庫の近くという立地もあり、人里離れた寂しい場所にひっそりと佇んでいたその廃墟は、長らく放置され続けていた。
2010年頃には既に建物の窓ガラスは破壊され、火災の痕跡や落書き、 破壊行為の跡が随所に確認されていた。
やがて“猫屋敷”と呼ばれ、地元では「魔女の館」に次ぐ心霊屋敷として語られるようになった。
そして2018年の西日本豪雨による土砂崩れをきっかけに、倒壊の危険性が高まったため、2019年12月には完全に解体され、現在では跡形もなく更地となっている。
呉市の猫屋敷の心霊現象
猫屋敷の心霊現象は、
- 黒ずくめの男性の霊が現れる
- 誰もいない廃墟内から猫の鳴き声が聞こえる
- 二階の窓からこちらを見つめる目がある
- 解体後も付近で霊的な気配を感じる者がいる
である。以下、これらの怪異について記述する。
猫屋敷で最も恐れられていた現象が、「黒い影の男」の目撃談である。
夜間に敷地へ足を踏み入れた者の中には、窓辺に佇む黒い人影を見た者が少なくない。
その男は何も語らず、ただじっとこちらを凝視していたという。動かぬはずの廃墟に、生者の気配などあるはずがない。
次に挙げられるのが「猫の鳴き声」である。
建物には誰もおらず、もちろん猫などいないのに、どこからともなく「ニャア……」というかすれた声が響くのだという。
その声はまるで、何かを待ち続けているかのように、切なさを帯びているという。
さらに、一部の探索者は、二階の窓から自分を見つめる「目」に遭遇している。
目撃者によると、窓の奥には顔のようなものがあり、ぎょろりとした目だけが闇の中で浮かび上がっていたという。
その顔は明らかに人間のそれではなく、異様に歪んでいた。
そして驚くべきは、2019年に解体された後も、現地付近で妙な「気配」を感じる者が後を絶たない点である。
廃墟が消え去ったにもかかわらず、周囲に重苦しい空気が残り続け、通りかかった者が急に頭痛やめまいを訴えることもあるという。
呉市の猫屋敷の心霊体験談
ある若者グループが猫屋敷を訪れたのは、深夜0時を過ぎた頃であった。
懐中電灯を手に建物内部を探索していると、突如「ニャア……ニャア……」と明らかに近くで猫の鳴き声が響いたという。
しかし、その声がする方へ近づいても、そこには何もいなかった。
その直後、グループの一人が急にうずくまり、「視線を感じる……誰かが見てる……」と呟いた。
そして彼の目線の先、二階の窓を照らしたライトの先には、黒い影が一瞬だけ浮かび上がり、そしてすぐに消えたという。
恐怖に駆られた彼らはその場を逃げるように離れたが、後日、そのうちの一人が不可解な高熱を出し、数日間うなされ続けたという。
呉市の猫屋敷の心霊考察
猫屋敷にまつわる数々の怪異は、単なる噂や都市伝説では片づけられない何かが存在していたと考えるべきである。
かつてこの屋敷には、老人とその飼い猫が静かに暮らしていたとされる。やがて老人が先に亡くなり、猫だけが屋敷に取り残されたという話が語り継がれている。
この猫は、亡き主人の帰りをひたすらに待ち続け、ついにその命を終えた。
だが、猫の魂はなおも主を待ち続けており、それが猫の鳴き声として現世に響くのかもしれない。
また、現れる「黒い男」の正体がこの屋敷のかつての住人である可能性も高い。
人に忘れられ、風雨にさらされ、破壊され尽くした屋敷と共に、その魂までもが風化せずにこの地に留まり続けているのではないだろうか。
そして、解体後も残る霊的な気配は、物理的な建造物を超え、場所そのものに染みついた念が今も消えずに存在している証左である。
猫屋敷はもはや存在しないが、その「記憶」は今なお、この土地に生き続けているのだ。
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