大阪府豊能郡能勢町下田尻〜野間出野。
山の中に、唐突に舗装が途切れる府道がある。
猪ノ子峠は、大阪府道4号(茨木能勢線)の途中に残る分断区間であり、現在でも一部が未舗装のまま放置されている峠道である。
昼間であっても人影は少なく、夜になれば完全に山に飲み込まれる。
この峠は、古くから「通ると何かを感じる」「夜は声がする」といった噂と結びつき、心霊スポットとして語られることがある。
本記事は幽霊の存在を断定しない。
扱うのは、猪ノ子峠にまつわる心霊の噂と、それが成立してしまう地形・歴史・構造である。
猪ノ子峠とは?

猪ノ子峠(いのことうげ)は、大阪府道4号・茨木能勢線に含まれる峠である。
標高はおよそ280メートル。現在も約2kmにわたり未舗装区間が残り、「酷道」「腐道」と呼ばれることもある。
この道は、かつて名月街道と呼ばれ、
丹州街道・園部街道・能勢街道を結ぶ生活・交易路として利用されてきた古道である。
峠道の周囲には、
- 南無阿弥陀仏と刻まれた石碑
- 地蔵と見られる石仏
- 題目塔と思われる石造物
が点在しており、単なる林道ではないことが分かる。
現在は舗装と未舗装が唐突に切り替わり、
「府道なのに林道」「車線があったり消えたりする」という、
利用者に強い違和感を与える道になっている。
猪ノ子峠の心霊の噂
この峠で語られている噂は、次のようなものだ。
- 昔、この峠で行き倒れになった旅人の霊が出る
- 夜中に走行すると、オーブのような光が見える
- ヘルメットのすぐ横で、人の話し声が聞こえる
- 誰もいないはずの場所から足音がする
また、峠の近くには「安徳天皇御陵墓」があり、
それが霊的な噂を強めているとも言われている。
特徴的なのは、
「誰の霊かは分からない」「はっきり姿を見た話が少ない」 という点である。
つまりこの場所の噂は、
強烈な怪談ではなく、違和感の積み重ねとして語られている。
※上記はいずれも噂として流通している話であり、事実関係を示すものではない。
猪ノ子峠が心霊スポット化しやすい理由
猪ノ子峠が心霊スポットとして語られやすい理由は、怪談そのものよりも「峠の条件」にある。
1. 古道であり、弔いの痕跡が多い
石碑や地蔵は、旅人や行き倒れを弔う目的で置かれることが多い。
峠という場所自体が、もともと「死と隣り合わせ」の空間である。
人は、理由の分からない石造物を見ると、
そこに「何かあったはずだ」という物語を補完してしまう。
2. 府道なのに未舗装という矛盾
「府道=整備されている」という常識が、この峠では崩れる。
舗装が突然途切れ、
白線が消え、
道幅が狭まり、
林道のような景色に変わる。
この落差が、利用者に強い不安感を与える。
3. 夜間は完全な孤立空間になる
街灯はほとんどなく、
夜は音が極端に減る。
そのため、
- 自分の足音
- 風の音
- エンジン音の反響
が、すべて「人の気配」に変換されやすい。
4. 「通る理由がない」道である
観光地でもなく、生活道路としても使いにくい。
つまり「わざわざ通る人」しか来ない。
この「目的のない通過」が、
体調や精神状態の揺らぎと結びつき、
「何か感じた」という体験談を生みやすい。
口コミで多い印象
口コミや走行記録を見ると、心霊よりも次の声が多い。
- 未舗装だが走れる
- バイクだと楽しい
- 歴史を感じる峠
- 石碑や地蔵が多く、雰囲気がある
つまり、昼間の猪ノ子峠は“趣のある古道”として成立している。
だからこそ、夜になると印象が反転しやすい。
夜に通るなら注意点
猪ノ子峠は、心霊以前に危険が多い。
- 未舗装区間があり、滑りやすい
- 夜は落石・動物の飛び出しがある
- ガードレールが途切れる箇所がある
- 携帯の電波が不安定
噂の検証目的で夜に通るほど、
“怖さ”より先に“事故の危険”が勝つ。
通るなら昼間、十分な装備で短時間が現実的である。
まとめ
猪ノ子峠は、大阪府道4号に残る数少ない未舗装の峠道であり、
かつて名月街道として人々が行き交った歴史を持つ。
行き倒れの旅人の霊、声、足音といった噂があるが、
幽霊の存在は断定できない。
しかし、
- 古道
- 弔いの痕跡
- 構造的な不安
- 夜の孤立
これらが重なった結果、
「何かを感じやすい峠」になっているのは確かである。
猪ノ子峠は、
道そのものが記憶を抱えた場所として、
今も静かに残り続けている。







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