熊本県南小国町にある「臼内切(うすねぎり)/千人塚」には、かつて隠れキリシタンの集落が存在した。幕末の弾圧により一夜にして斬首された12家族の無念が眠るこの地では、現在も数々の怪異が語り継がれている。今回は、臼内切(千人塚)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
臼内切(千人塚)とは?
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臼内切(うすねぎり)は、熊本県阿蘇郡南小国町にある山あいの地である。
「千人塚(せんにんづか)」の異名でも知られ、現在では知る人ぞ知る心霊スポットとして語られている。
この地は、江戸時代末期の嘉永6年(1853年)に、幕府によるキリシタン弾圧の舞台となった。
隠れて信仰を続けていたキリシタンの集落が密告によって露見し、12家族・約60人がその日のうちに一斉に打ち首にされたという。
斬首された者たちは、家族ごとに12の塚に埋葬された。
以降、この場所は「祟りの地」として人々の口に上るようになった。
地元では日が暮れると誰一人近づかない。
草に覆われた塚は見た目には分かりにくく、知らずに足を踏み入れれば、それだけで何かが取り憑いてくる――そう信じられている。
臼内切(千人塚)の心霊現象
臼内切(千人塚)にまつわる主な心霊現象は、
- 女性の霊が目撃される
- 訪問者が原因不明の高熱にうなされる
- 布団の上に何かが乗るような圧迫感に襲われる
- 耳鳴りが突如として「悲鳴」に変わる
- 道中で謎の声や人の気配を感じる
- 地元民が異様なまでに訪問を拒む
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、もっとも多く報告されている現象が、「訪問後に発熱する」というものである。
何人もの者が臼内切を訪れた後、急な高熱に見舞われ、解熱剤を飲んでも効果がなく、長期間にわたりうなされたという。
ある者は、夜中に布団に横になっていると、突然耳鳴りに襲われ、それがだんだんと誰かの悲鳴のように聞こえ始めたと証言する。
そしてその直後、布団の上に重苦しい何かが「乗ってきた」という圧迫感を感じ、身動きが取れなくなったという。
また、昼間であっても油断はできない。どこからともなく人の声が聞こえる、誰もいないのに人の気配を感じる――そうした怪異の報告が絶えないのである。
地元の人々はこの場所に一切近づかない。
道をたずねた観光客が、地元住民から「絶対に行くな」と強く制止された例もある。
彼らはその理由を語らない。ただひとつ、臼内切には「何かがいる」のだとだけ答える。
そして何より恐ろしいのが、夜に現れるとされる女性の霊である。
髪が濡れたように垂れ下がり、白い着物を着たその姿は、首から下だけがぼんやりと浮かび上がって見えたとの証言もある。
処刑された家族の中の一人なのだろうか。
臼内切(千人塚)の心霊体験談
ある若者が夏の夜、肝試し半分で臼内切を訪れたという。
同行者と一緒に塚のあたりを歩いていたとき、突如として寒気に襲われ、帰宅後、原因不明の高熱を発症。布団で寝ていると、耳の奥で「キーン」と耳鳴りが始まり、それが徐々に悲鳴に変わっていったという。
そして、体が動かなくなり、息苦しさを感じた次の瞬間、明らかに「何か」が布団の上に乗っている感覚に襲われた。
以降、その若者は二度と臼内切を話題にしなくなった。
あの夜、彼に何があったのか――それを語れる者はいない。
臼内切(千人塚)の心霊考察
臼内切におけるこれらの心霊現象は、歴史の中で虐殺された人々の強烈な怨念によるものと考えられる。
自らの信仰を守るために山奥に隠れ住みながらも、最期には家族ごと処刑され、名もなき塚に葬られた――その無念は、時を超えて今なおこの地に渦巻いているのだろう。
祟りとは何か。
科学では解明できない負のエネルギーが、人の心身に干渉してくる現象だとしたら、臼内切はまさに「現代に残る呪いの地」と言える。
理不尽に命を奪われ、塚に蹴り落とされた者たちの声なき叫びが、今もこの土地の空気に溶け込んでいるのではないだろうか。
臼内切に足を踏み入れる者は、その覚悟があるかどうかを、まず自らに問いかけねばならない。
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