鳥取県東伯郡にひっそりと佇む廃墟――そこには、静寂の中に潜む異様な気配が満ちている。今回は、ウェル鳥取ふじつ荘にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
ウェル鳥取ふじつ荘とは?

ウェル鳥取ふじつ荘は、鳥取県東伯郡湯梨浜町の東郷温泉に位置し、東郷湖を見下ろす高台に建てられた厚生年金施設である。
1972年に平屋建てで開設され、1997年には二階建てへの増築と地下階の追加が行われた。
もともとは厚生年金老人ホームの一つであり、その後は宿泊施設として一般開放され、「厚生年金鳥取ふじつ荘」として多くの人が訪れていた。
運営は鳥取社会保険事務所、建物の所有権も同所にあった。
しかし、2004年9月30日、年金福祉還元事業への批判が高まる中で閉鎖され、2006年には整理機構に移管。
翌2007年には社会福祉法人の所有となり、やがて敷地も移転された。
だがそれも長くは続かず、2007年頃にはすでに廃墟と化していた。
現在では、窓は砕け、落書きが壁を這い、誰のものとも知れぬ足音が響く、荒廃と狂気が入り混じる異界のような場所となっている。
ウェル鳥取ふじつ荘の心霊現象
ウェル鳥取ふじつ荘の心霊現象は、
- 女性の霊が目撃される
- 走って追いかけてくる霊が現れる
- 男性の霊が徘徊している
- 夜間、誰もいない館内から物音が聞こえる
である。以下、これらの怪異について記述する。
まずもっとも多く語られるのは「女性の霊」である。
廃墟となった館内の2階廊下に、長い髪を垂らし、うつむき加減で立ち尽くす姿が目撃されている。
目撃者によれば、その女は近づくとゆっくりと顔を上げるが、顔面は血のように赤黒く染まっていたという。
次に恐れられているのが、「走って追いかけてくる霊」である。
主に地下階で発生しやすく、薄暗い通路を歩いていると、背後から荒い足音と共に全速力で駆け寄ってくる気配がするという。
振り返っても誰もいない。
だが、その気配が消えた直後、耳元で「帰れ」と囁かれたという証言も存在する。
また、「男性の霊」が夜間に徘徊しているとの報告もある。
作業着姿の中年男性が、物憂げな表情で窓際に佇んでいるのを見た者が複数いる。
彼の姿は決して生々しくはないが、確かに“この世の者ではない”と感じる異様さがあったという。
最後に、「誰もいない館内から物音が聞こえる」という現象が挙げられる。
ドアの開閉音、廊下を引きずるような足音、天井から落ちてくる異音など、まるで廃墟全体が何かに支配されているかのような、不自然な音の数々が確認されている。
ウェル鳥取ふじつ荘の心霊体験談
ある探索者の証言によれば、真夜中に訪れた際、建物の奥で突然「ギィィ……」という軋むような音が鳴り響いたという。
音のする方へライトを向けると、開かずの間とされる一室の扉がわずかに開いていた。
中を覗くと、朽ちたベッドの上に、何か黒い影のようなものが腰掛けていた。
ライトを照らすと、それは明らかにこちらを見ていたという。
その直後、廊下の奥から駆け寄ってくる足音がし、探索者は叫びながら外へ逃げ出した。
出口に着いた頃には、いつの間にか風が止み、静けさだけが広がっていたという。
ウェル鳥取ふじつ荘の心霊考察
ウェル鳥取ふじつ荘が心霊スポットとして名高い理由の一つは、施設の性質にあると考えられる。
元々老人ホームとして運営されていたことから、多くの入居者がこの地で最期を迎えた可能性が高い。
死と日常が交差する空間であったがゆえに、その“気配”が今なお残留しているとも取れる。
また、施設の地下構造や増築による複雑な造りは、“何か”を閉じ込めるためだったのではないかという都市伝説さえささやかれている。
荒廃の進む館内には、まるで時間が止まったかのような空気が支配しており、訪れる者を過去と対峙させる。
心霊現象の多くが「追いかけてくる」「見つめてくる」といった強い干渉型であることから、単なる残留思念ではなく、強い未練や怨念による“自我を持った霊的存在”が彷徨っている可能性も否定できない。
この場所は、単なる廃墟ではない。
時の止まったままの亡者たちが、今もなお“そこにいる”場所なのである。
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