徳島県阿南市の山中にある「元信一号隧道」は、1953年に造られた全長59メートルの古い素掘り隧道である。湿気と闇に満ちたその内部では、老爺の霊の目撃談や「おいで」と呼ぶ声、原因不明の体調不良など、数々の怪異が報告されている。今回は、元信一号隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
元信一号隧道とは?

元信一号隧道は、徳島県阿南市の山間部にひっそりと存在する全長59メートルの短いトンネルである。
竣工は1953年。
戦後の混乱がまだ色濃く残る時代に、簡素な素掘りによって建設されたものであり、その荒々しい岩肌は今もなお当時の面影を色濃く残している。
トンネルの入口は、片方が四角く、もう片方がやや丸みを帯びた形状をしており、見る者に不気味な印象を与える。
森に囲まれたその場所は昼間でも薄暗く、夜間に足を踏み入れることは地元でも「避けたほうがよい」と囁かれている。
内部はじめじめとした湿気に包まれており、壁面は黒ずみ、カビと泥が混じったような臭いが漂う。
照明として設置された蛍光灯のようなライトが一つだけ天井にぶら下がっているが、その光は薄弱で、まるで何かを隠そうとしているかのように陰影を作り出す。
今なお通行者が存在するのかは定かではないが、道幅は極端に狭く、軽自動車でも通過は困難を極めるだろう。
この陰鬱な雰囲気の中で、幾度となく“異常”が目撃されている。
元信一号隧道の心霊現象
元信一号隧道の心霊現象は、
- 老爺の霊がトンネル内に立っている
- 通るだけで頭痛や吐き気を催す
- 何者かの足音が背後から聞こえる
- トンネルの奥から「おいで」と呼ぶ声がする
である。以下、これらの怪異について記述する。
老爺の霊がトンネル内に立っている
最も有名な心霊現象が、トンネルの中央付近に現れるという老爺の霊である。
年老いた男の姿は、ぼんやりとした影のようでありながら、じっとこちらを見つめてくるのだという。
通行人が車のライトで照らした際、一瞬だけ目が合い、その直後に姿がかき消えるという証言が複数存在する。
その目には、深い恨みのような感情が宿っていたという。
通るだけで頭痛や吐き気を催す
トンネルに入ると、急激に気圧が変わったかのような重たい空気に包まれ、体調を崩す者が多い。
なかには、頭痛や吐き気を訴え、そのまま病院に搬送されたケースもあるという。
この現象は、心霊的なものに敏感な者ほど強く影響を受けるとされ、地元では「霊障のある場所」として恐れられている。
何者かの足音が背後から聞こえる
徒歩で通った者の多くが、背後から「コツ、コツ、コツ…」と足音を聞いたと証言している。
振り返っても誰もおらず、足音だけがトンネルの奥へ消えていく。
ときには、その音が一気に駆け寄ってくるような錯覚を起こし、パニック状態になる者もいるという。
トンネルの奥から「おいで」と呼ぶ声がする
最も不気味な現象は、トンネルの奥から聞こえる「おいで」という声である。
その声は明確に人のものでありながら、妙にくぐもっており、耳元で囁かれているように感じることもあるという。
複数人で訪れた場合でも、その声は一人にしか聞こえず、「あれ、今誰か呼んだ?」という会話が何度も交わされている。
この声を追ってトンネルの奥へ進んだ者が、その後体調不良を訴えたという記録もある。
元信一号隧道の心霊体験談
ある若者二人組が深夜に肝試し目的でこのトンネルを訪れた。
スマートフォンで動画を撮影しながら進んでいたが、突然一人が立ち止まり、「今、じいさんいたよな?」と呟いた。
その瞬間、もう一人が激しい嘔吐を始め、立っていられなくなったという。
帰宅後、動画を確認したところ、二人の背後にぼんやりと立つ人影が映り込んでいた。
だが、それは誰とも話さず、ただ二人の背を見つめ続けていたのである。
元信一号隧道の心霊考察
元信一号隧道が、なぜこれほどまでに強い霊的現象を引き寄せるのか――その理由は定かではない。
だが、いくつかの仮説が挙げられている。
ひとつは、戦後まもなく建設されたという時代背景である。
この時期には不慮の事故や過酷な労働が日常的であり、隧道の工事に関わった者が命を落とした可能性はあるだろう。
また、老爺の霊に関しては、かつてこの近辺に住んでいた人物が、隧道の完成後に何らかの理由で自ら命を絶ったという地元の古い噂も存在する。
さらに、トンネルの構造そのものが持つ閉塞感と湿気、そして人里離れた立地が、心理的な恐怖を強調しやすい要因となっている。
暗闇、狭さ、孤独――人間が本能的に恐れるこれらの要素が揃ったこの場所は、霊的な存在にとっても“棲みやすい”空間なのかもしれない。
元信一号隧道は、ただの古びたトンネルではない。そこには確かに、何かが潜んでいる。
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