佐賀県三養基郡上峰町にある「五万ヶ池」には、古より数多の怪異が語り継がれている。武将・源為朝にまつわる血生臭い伝説を背景に、夜な夜な霊がさまようと噂されるこの池で、一体何が起きているのか──。今回は、五万ヶ池にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
五万ヶ池とは?

五万ヶ池(ごまがいけ)は、佐賀県三養基郡上峰町の鎮西山中腹に位置する小さな溜池である。
この池は、かつて屋形原地区の農業用水として利用されていたが、山全体が「町民憩いの森」として整備された今日でも、その静けさとは裏腹に、不気味な異様さを漂わせている。
この池にまつわる最大の伝説は、平安末期の武将・源為朝に関するものである。
為朝は若き日、乱暴な性格ゆえに父から勘当され、九州へと追放された。
その後、鎮西山に山城を築き、この地一帯を制圧。自ら「鎮西八郎」を名乗るに至った。
伝承によれば、ある日為朝に敵対する豪族が、五万もの騎馬兵を引き連れて鎮西山へ進軍。
しかし、為朝の軍勢がこれを迎え撃ち、壮絶な戦いの末に敵軍を池の周辺で全滅させたという。
流れた兵の血は池の水を赤く染め、「血の池地獄」と化した。
この恐るべき合戦の記憶が、「五万ヶ池」という名の由来となったとされている。
だが、これらはあくまで伝説の域を出ない。
実際には、この池は「駒ヶ池」と呼ばれていたものが転訛し、現在の名になったとする説が有力である。
山城に仕える兵たちのための水源であり、戦乱の名残を匂わせる名とは裏腹に、歴史的事実は静かである。
しかし、歴史が静寂を装っても、人々が感じる異変はそうではない──。
五万ヶ池の心霊現象
五万ヶ池の心霊現象は、
- 正体不明の霊が現れる
- 声が聞こえる
- 池の周囲で誰かの気配を感じる
- 夜に立ち入ると急に寒気に襲われる
である。以下、これらの怪異について記述する。
正体不明の霊が現れる
池のほとりに立つと、まるで誰かに見下ろされているような視線を感じるという話がある。
誰もいないはずの場所で、木々の間から不意に「人影」が覗くという証言も複数存在する。
それは着物姿の男であったり、鎧を纏った落武者のようであったりと様々だが、共通しているのは「どこか現世の存在ではない」という不気味な違和感である。
声が聞こえる
夜になると、池の周辺で「うめき声」や「話し声」が聞こえてくるとされる。
耳を澄ませると、それはまるで命乞いのような、あるいは怒りに満ちた呻き声にも聞こえる。
ときには、自分のすぐ背後で囁かれたように感じることもあるという。
池の周囲で誰かの気配を感じる
特に霧が出ている朝や夜に多く報告されるのが、「誰かがついてくる」ような気配である。
振り返っても誰もいないのに、足音や草を踏む音が一定の距離を保ってついてくるという。
中には、池の前で金縛りに遭ったという者もいる。
夜に立ち入ると急に寒気に襲われる
気温に関係なく、池に近づくと突然冷気が走るという。
鳥肌が立ち、足がすくむほどの恐怖感に包まれる。
特に満月の夜や雨の翌日など、湿気を含んだ空気の中では現象が顕著だとされる。
五万ヶ池の心霊体験談
実際に五万ヶ池を訪れたある若者の証言によれば、友人と二人で心霊スポット巡りをしていた際、池に着いた瞬間に空気が変わったという。
辺りは静まり返っていたが、池の水面に近づいたとき、波もないのに水が突然揺れた。
そしてその直後、「おい…」という低い声が、池の向こうから聞こえてきたという。
驚いた二人は逃げるようにその場を離れたが、帰りの車中でも誰かの視線を感じ続けたと語っている。
五万ヶ池の心霊考察
五万ヶ池にまつわる心霊現象は、科学的には説明のつかないものばかりである。
しかし、伝説に登場する「五万の兵」が討たれたという背景を考えると、この地に何らかの霊的残留思念があると考えるのは自然かもしれない。
五万の命が一度に失われた場所、血に染まった池──その場に怨念が染みつかないはずがない。
たとえ実際の合戦がなかったとしても、数百年の間に語り継がれた恐怖や想像がこの地を“呪われた場所”へと変貌させたのかもしれない。
また、為朝伝説の背後には日向通良という豪族の存在があるという説も興味深い。
もし、敗れたのが通良側であれば、その無念の思いこそが、今日の心霊現象の根源であるとも考えられる。
霊に寿命はあるのか? もしないのであれば、五万ヶ池の静けさの裏には、今もなお成仏できぬ数万の魂が、沈黙のまま佇んでいる可能性がある。
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