壱岐島の東端に位置する景勝地・左京鼻。この断崖絶壁の地には、古くから数々の怪異が囁かれてきた。美しい風景の裏に潜む、投身自殺の名所という暗い一面。そして、現れる男の霊、引きずり込まれる海、公衆トイレでの怪異など、恐ろしい心霊現象の数々――。今回は、左京鼻にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
左京鼻とは?

左京鼻とは、長崎県壱岐市の八幡半島の先端に位置する断崖絶壁の岬である。
玄界灘を一望する大パノラマと、海岸に点在する奇岩群が織りなす風景はまさに圧巻で、『壱岐対馬国定公園』にも指定されている。
この地には、細く連なる柱状節理の岩礁「折柱(おればしら)」があり、その神秘的な形状から「観音柱」とも呼ばれ、壱岐の神話における“島を繋ぎとめた八柱のうちの一本”とされている。
壱岐随一の景勝地として観光客も多く訪れる場所であるが、その美しさの裏に、恐ろしい歴史と数々の怪異が隠れている。
江戸時代初期、この地では深刻な旱魃が島を襲った。
後藤左京と日峰和尚は7日7夜の雨乞いの祈祷を行い、命を賭けて雨を呼ぼうとした。
しかし、願い叶わず、左京はこの断崖から身を投げ、日峰和尚は焼身自殺を遂げたとされている。
この悲劇が地名「左京鼻」の由来とも言われている。
左京鼻の心霊現象
左京鼻の心霊現象は、
- 男性の霊が出現する
- 夜間、海から霊に引きずり込まれるというウワサ
- 公衆トイレで首を吊る霊の目撃情報
- 崖から飛び降りた霊の姿が見える
である。以下、これらの怪異について記述する。
男性の霊が出現する
断崖の上に立つと、ふいに視界の端に人影がよぎることがある。
それは決まって、黒い着物姿の男である。じっと沖を見つめているが、声をかけた瞬間、ふっと消えてしまう。
この男の正体は、命がけで祈祷を行い、崖から身を投げた後藤左京だとする説が根強い。
夜間、海から霊に引きずり込まれるというウワサ
夜の左京鼻では、不思議な現象が起こる。
海辺に立っていると、誰もいないはずなのに足元から腕が伸びてきて、まるで引きずり込まれるような感覚に陥るという。
実際に海に落ち、亡くなった者もいるという噂が絶えない。
地元では「霊に引かれる」と言われ、夜間の訪問は固く禁じられている。
公衆トイレで首を吊る霊の目撃情報
母親の証言によれば、かつてこの地の公衆トイレで高校生の男子が首を吊って亡くなった事件があったという。
その後、同じ場所で誰もいないはずのトイレ個室からうめき声が聞こえたり、首に縄をかけたまま宙に浮く人影を見たという証言も複数存在する。
崖から飛び降りた霊の姿が見える
切り立った崖の端には、時折、白いワンピースを着た女性が立っていることがある。
しかし次の瞬間、風にあおられるように彼女は飛び降りる。
慌てて駆け寄っても、下には何もない。ただ海が静かに波を打つばかりである。
左京鼻の心霊体験談
地元の住人である女性が語った体験談によると、彼女の母親が高校生だった頃、後輩の男子生徒が左京鼻近くの公衆トイレで首を吊って亡くなったという。
その数ヶ月後、女子生徒が崖から飛び降りて命を絶ったとも聞いたそうである。
周囲では、この出来事以降、夜な夜な人の気配がすると言われるようになり、地元の若者たちの間では恐怖の場所として語り継がれている。
左京鼻の心霊考察
左京鼻に現れる霊の多くは、「無念の死」を遂げた者たちの残留思念であると考えられる。
命をかけて雨を呼ぼうとした後藤左京の強い思いは、この地に深く刻まれており、その怨念が霊として姿を現しているのかもしれない。
また、自殺の名所として知られることからも分かるように、死に場所として選ばれたことで、現世に強い未練を残す霊が集まりやすい場所とも考えられる。
さらに、地形的にも突端に位置する“岬”は霊が集まりやすいとされる。
特に“鼻”と呼ばれる断崖には、「風の音」「波の轟音」「孤立感」が重なり、人の心に異常を引き起こしやすいとされる。
こうした要因が重なり、左京鼻は恐ろしい心霊現象の舞台となっているのである。
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