広島県の静かな山あいに架かる津蟹大橋は、一見すれば四季折々の景観が美しい場所である。だがその赤いアーチには、自ら命を絶った人々の怨念が今も彷徨い、不可解な現象や恐ろしい噂が後を絶たない。今回は、津蟹大橋にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
津蟹大橋とは?

津蟹大橋は、広島県の御調(みつぎ)ダム建設に伴い水没する県道の付替道路の一部として造られた橋である。
橋梁形式は「ニールセンローゼ橋」と呼ばれるもので、これは国内では広島県の安芸大橋に端を発する構造様式である。
津蟹大橋は、その技術を受け継ぎ、赤く塗装されたアーチが特徴的であり、青龍湖(せいりゅうこ)と名付けられたダム湖の湖面に四季折々の姿を映し出してきた。
一見すれば、山間の静かな自然に溶け込む風光明媚な橋であるが、この地には恐ろしい噂が絶えず囁かれている。
津蟹大橋の心霊現象
津蟹大橋の心霊現象は、
- 赤い橋の中央にぼんやりと佇む女性の霊が現れる
- 通行中に突然背後から声をかけられるが、振り返っても誰もいない
- 車で橋を渡ると、いつの間にか後部座席に誰かが座っている
- 橋のたもとでカメラを構えると、レンズ越しに無数の手が伸びてくる
である。以下、これらの怪異について記述する。
最も有名なのは、橋の中央付近に現れる女性の霊である。
白い服をまとい、虚ろな瞳で前を見据えたまま立ち尽くしている姿が昼間であっても目撃されているという。
彼女はふとした瞬間に橋から身を投げる仕草を見せ、そのまま湖面へ吸い込まれるように消えてしまうのだ。
また、夜間に車で橋を走ると、後部座席のミラー越しに見知らぬ顔が映ることがある。
薄暗い車内で、何も言わずにこちらを見つめているだけだが、次の瞬間には霧のように消えてしまうという。
さらに橋の上では、誰もいないはずなのに「待って」というか細い声が背後から響くことがある。
その声に驚いて振り返ると、風の音だけがあたりを支配し、冷気が背筋を撫でるという。
観光で訪れた者が橋の赤いアーチを撮影すると、写真には異様な数の手形が浮かび上がることがある。
これらの手は、助けを求めているのか、それとも引きずり込もうとしているのか、判然としない。
津蟹大橋の心霊体験談
ある男性は、昼間に友人とドライブで津蟹大橋を渡った際、橋の中央で車が急に停止してしまった。
エンジンはかかっているのに動かず、ふと助手席の友人を見ると、その視線は助手席の窓に釘付けであった。
そこには、青白い手がガラスを内側から叩くように張り付いており、二人は恐怖で動けなくなったという。
別の若い女性は、夜に写真を撮ろうと橋に立ったところ、ファインダー越しにこちらに背を向けた長髪の女が立っていた。
驚いてカメラを下ろしたが、肉眼では誰もおらず、再びカメラを覗くとそこには女が振り返り、血の気のない顔で笑っていたという。
津蟹大橋の心霊考察
津蟹大橋が心霊スポットとして語られる理由には、この場所が長い間、命を絶つ者が後を絶たない土地であるという背景がある。
青龍湖の静かな湖面は、しばしばそうした人々の最期を呑み込み、その無念や哀しみが今も橋に留まり続けているのではないか。
赤い橋の色は本来、景観を引き立てるためのものであったはずだが、血の色に例えられ、より恐怖を掻き立てるものとなった。
訪れる者はこの地に残る怨嗟や悲痛の気配に知らず触れ、それが幻影や不可解な現象となって現れるのではないだろうか。
誰もいないはずの橋で感じる視線や、耳元で囁かれる声、写真に残る不気味な痕跡。
それらはすべて、今もなお津蟹大橋に取り憑く怨霊たちの訴えに他ならないのかもしれない。
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