山口県上関町にある白井田漁港には、美しい風景とは裏腹に、夜な夜な聞こえる女性の泣き声や、姿なき気配に怯える体験談が後を絶たない。今回は、白井田漁港にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
白井田漁港とは?

白井田漁港は、山口県の長島にある小規模な漁港である。
上関大橋を渡った先、白井田集落の西側に位置しており、周囲を切り立った山々に囲まれた、いわば“隠れ里”のような雰囲気をもつ場所である。
1960年には1300人以上が暮らしていたが、現在の住民は200人程度にまで減少し、今では静寂に包まれた漁村となっている。
漁港には長波止が延び、釣り場としても知られているが、港内側は釣り禁止となっており、沖側に釣り人が集まる。
波止には有料駐車場や常夜灯、トイレなどの設備が整っているが、それらの便利さの裏に、ある“異変”が潜んでいると囁かれている。
白井田漁港の心霊現象
白井田漁港の心霊現象は、
- 夜釣り中に、誰もいないはずの岸辺から女性の泣き声が聞こえる
- 周囲に人影がないのに、波止の先端で足音が近づいてくる
- 常夜灯の下に、誰かが立っているように見えるが近づくと誰もいない
- 空気が急に冷たくなり、視界が白く霞むような現象が起こる
である。いずれも現地を訪れた者が実際に体験したとされる出来事であり、単なる噂話にとどまらない、不気味な実感がにじんでいる。
以下、これらの怪異について記述する。
白井田漁港の長波止は、港の付け根から沖側に伸びている。
港内側はフェンスの設置が予定されるほど立入が制限されており、釣り人は主に沖側を利用する。
その沖側、特にテトラポッド付近や波止のコーナー部分において、不可解な現象が多く報告されている。
夜釣りをしていた人物が、背後から微かなすすり泣きのような声を聞いたと語っている。
その声は徐々に近づいてきたというが、振り返っても誰の姿も見えなかったという。
声は女性のものであり、かすかに「たすけて」とも聞こえたとの証言もある。
また、常夜灯の下に何かが立っているような“気配”を感じた者も多い。
近づくと何もいない。しかし、視線を戻すと再びそこに“何か”がいる──そんな現象が繰り返されるという。
波止の先端では、風もないのに急に冷気が漂い、足元に立つ波止が白く霞んで見えることもある。
その瞬間、遠くで誰かが足音を立てて歩いてくるような感覚に襲われると語る者もいる。
白井田漁港の心霊体験談
ある釣り人の証言である。
秋のよく晴れた夜、娘とアジ釣りに訪れたという。
最初は快調に釣果を上げていたが、波止の中ほどに移動したあたりから異変が起こった。
潮の流れも穏やかで風もないのに、急に背後から冷たい風が吹いた。
娘が「誰か泣いてる」と言い出し、波止の奥の暗がりを指差した。
その方向には誰もいないはずだった。しかし、確かにか細い嗚咽のような音が聞こえた。
怖くなり、急いで車へ戻ろうとしたが、途中で何度も足元に視線を感じ、振り返っても誰もいなかったという。
以来、その父親は白井田漁港に近づいていない。
白井田漁港の心霊考察
白井田漁港で報告される心霊現象の多くは「音」に関するものである。
とくに“女性の泣き声”という要素は、過去にこの地で何らかの悲劇があったことを暗示しているかのようである。
特攻兵器「回天」の搭乗員・和田稔少尉が消息を絶ち、のちに白井田近海に漂着したという史実も無関係ではないかもしれない。
海にまつわる死と、繰り返し現れる“呼ぶ声”──。
この場所に未浄化の霊が漂っている可能性は否定できない。
また、廃校となった白井田小学校の崩壊した校舎が、漁港を見下ろすように山の中腹に残されている。
長年にわたり誰の声も届かない場所で、かつての記憶と怨念が風に乗って波止に降りてくる──そんな想像も現実味を帯びるほど、この地の静けさは異様である。
白井田漁港。そこは、晴れた日中でさえ、どこか現実から切り離された空気が漂う。
ましてや夜。常夜灯に照らされた波止の上では、何か“見てはならないもの”と出くわす可能性もある。
釣り場として有名なこの場所に、もうひとつの「顔」があることを忘れてはならない。
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