秋山溜池には、かつて女性の遺体が発見されたという忌まわしい事件が存在する。それ以降、水面に現れる霊やトンネルからの呻き声など、不気味な現象が多発するようになり、地元では心霊スポットとして知られるようになった。今回は、秋山溜池にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
秋山溜池とは?

秋山溜池は、山口県山陽小野田市の県道355号線沿いに位置するアースダム式の大規模溜池である。
別名「秋山ダム」とも呼ばれているが、現地の顕彰碑には「秋山溜池」と正式名称が刻まれている。
この池は、昭和14年に起きた未曾有の大旱魃を契機に、加藤出身の実業家・橋本甲祐氏が義侠心から私財を投じて建設が始まったものだ。
田邊和三郎、山下美代蔵らの尽力、そして戦時中にもかかわらず延べ2万人の協力を得て、昭和19年に完成した。
水面積は八町五反歩(約東京ドーム2個分)という巨大さを誇り、貯水量は八十万立米。
釣り場としても一時期は人気があったが、ある事件をきっかけに、地元では“霊が出る池”として語り継がれている。
秋山溜池の心霊現象
秋山溜池の心霊現象は、
- 女性の霊が夜な夜な池の水面を彷徨っているという
- 洪水吐きのトンネルからうめき声が聞こえる
- 天端付近で、誰もいないはずの背後に人の気配を感じる
- 池の石碑に向かって手を合わせると、背後に黒い影が現れる
である。以下、これらの怪異について記述する。
秋山溜池の恐怖が囁かれ始めたのは、学生によって一人の女性の遺体がこの池で発見されたことがきっかけである。
遺体の女性は、近隣にあったカレー店に勤めていた人物で、突然の失踪の末、この池の底で変わり果てた姿となって見つかった。
溜池はドン深であり、底釣りも難しいとされるその地形が、遺体の発見を長引かせた要因とも言われている。
とりわけ恐れられているのは、堰体脇にある洪水吐きのトンネルである。
普段は静まり返っているが、夜になると「助けて」という女の呻き声が、まるで水に反響しているかのように聞こえるという。
さらに、このトンネルの中を覗いた者の中には、白い手が見えたと証言する者も存在する。
また、天端へと続く立入禁止の道に足を踏み入れようとすると、背後から強い視線を感じるという証言もある。
その場には誰もいないにも関わらず、まるで肩越しに覗かれているかのような感覚に襲われるという。
さらに、池の歴史が刻まれた顕彰碑に手を合わせると、背後に黒い影が一瞬現れ、そのままスッと消えるという報告が複数ある。
石碑の前では、不思議と体が重くなり、言葉を発しにくくなるとも言われている。
秋山溜池の心霊体験談
2016年7月、ある男性が秋山溜池を訪れた際、写真撮影をしていたところ、不可解な現象に遭遇した。
天端に近づこうとした際、風もないのに耳元で「……来ないで……」という微かな声が聞こえたという。
その後、洪水吐きの先にあるトンネルをズームで撮影した際、写真には赤い丸のような光の輪が映り込んでいた。
同行者は誰もそれを目視していない。さらに、石碑の前で立ち止まって説明板を読んでいると、背中にひやりとした風が当たった。
気温30度超の真夏日で、風の通らない場所での出来事だった。
それ以降、彼は数日間悪夢に悩まされ、何度も同じ溜池の夢を見たという。
秋山溜池の心霊考察
秋山溜池は、単なる美しい人工池ではない。そこには戦時中の人々の苦難と献身が染み込み、そして一人の女性の不可解な死が重なっている。
昭和14年の干魃から戦時の工事、2万人超の労力と死者の存在……。
そのような“人の想いと苦しみ”が重層的に蓄積された地であるからこそ、何かが“残って”しまったのではないかと考えられる。
また、水辺は霊を引き寄せやすいとされる。
特に溜池のように流れのない水は、“想念”が留まりやすいとされ、死者の未練が沈殿している可能性がある。
洪水吐きのトンネルは、水の通り道であると同時に、“異界への門”のような印象すら受ける。
顕彰碑という“祈りの場”で黒い影が現れるという点も、何かが鎮められていないことを示唆しているのかもしれない。
この池は、いまだ“完成していない何か”を抱えたまま、静かに山間に佇んでいるのである。
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