徳島県阿南市に存在する橘隧道には、男性の霊が現れるというウワサがある。地図にすら載っていなかった明治期の廃隧道であり、重厚な煉瓦造りと水没した内部が不気味な雰囲気を醸し出していることから、心霊スポットとして語られるようになったという。今回は、橘隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
橘隧道とは?

橘隧道(たちばなずいどう)は、徳島県阿南市橘町と那賀町内原を結ぶ旧国道195号線沿いに存在する明治時代の煉瓦造り隧道である。
1910年(明治43年)に竣工し、延長101メートル、幅員4.1メートルという当時としては立派な規模を誇った。
近代土木遺産としても評価され、平成17年(2005年)3月に土木学会より選定を受けている。
内部は煉瓦アーチ構造で、阿南側に向かって下り勾配となっており、現在では途中から水没している。
また、現代の地図には隧道の存在が記載されていなかったこともあり、知る人ぞ知る廃隧道であった。
四国では唯一とされる楯状迫石を用いた坑口構造を持ち、石積みの切込接ぎによる擁壁や、煉瓦の精緻な積み方など、当時の高度な技術力が感じられる建築物である。
橘隧道の心霊現象
橘隧道の心霊現象は、
- 男性の霊が現れる
- 不気味な雰囲気による霊的な気配の報告
- 地図に載っていなかったことから来る“隠された場所”という印象
である。以下、これらの怪異について記述する。
橘隧道は煉瓦と石で構成された重厚な造りが特徴である。
地元では名物とも言える老婦人が見学者と気さくに会話するなど、地域との距離は近いが、それでも“何かがいる”という雰囲気を感じ取る者は少なくない。
実際に内部へ入ると、蛍光灯の架線が垂れ下がり、煉瓦の壁には何かを吊るしていた痕跡のような金具が並ぶ。
不法投棄された家電製品や水没区間が、探索者に奇妙な違和感を与えることもある。
また、阿南市側の坑口はズリ山の埋立によって半ば埋没しており、容易には接近できない。
坑道の中腹ではコンクリートで補修された部分と煉瓦アーチが混在し、その境界線に立つと、時の流れと共に失われた“何か”の存在を感じざるを得ない。
橘隧道の心霊体験談
具体的な心霊体験談は報告されていないが、地元住民の間では、「男性の霊を見た」「内部に入ると背後に気配を感じた」「写真に白いモヤのようなものが写った」といったウワサが根強く残っている。
その不気味な佇まいは、訪問者の想像力を刺激し、体験と錯覚の境界線を曖昧にする。
これが、「誰もいないはずなのに、誰かがいるような気がする」と感じる者が後を絶たない理由であろう。
橘隧道の心霊考察
橘隧道が心霊スポットとして語られる背景には、いくつかの要素が絡んでいる。
第一に、「地図に載っていなかった」という過去の事実が、この場所に“隠された歴史”という印象を与えた。
実際に、廃道や旧道、そして使用されなくなった隧道というのは、過去の時間に閉じ込められたような孤独感を放つ。
第二に、坑道内の構造と環境がもたらす視覚・聴覚的な影響である。
蛍光灯の架線、途中からの水没、垂れ下がった金具類、不法投棄された物体――これらが訪問者にとって“異質な空間”を形成し、心理的な不安を増幅させている。
第三に、「男性の霊が出る」というウワサである。
これは具体的な目撃談が少ないにもかかわらず、複数の人物が同様の印象を抱いていることから、視覚化された恐怖ではなく、“雰囲気が導く恐怖”であると考えられる。
このように、橘隧道には明確な心霊現象の証拠が少ないにも関わらず、訪問者に「何かがいる」と思わせるだけの力がある。
それこそが、心霊スポットとしての真の怖さであり、物的証拠以上に、“感じさせる恐怖”がこの隧道には存在しているのである。
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