府能隧道のウワサの心霊話

徳島県の山間にひっそりと口を開く府能隧道。大正期に手掘りで築かれ、近代土木遺産としてその姿を残す一方、兵隊の霊が現れるという不気味な噂が絶えない。内部は薄暗く湿り、耳元で誰かが囁くような声が響くこともあるという。今回は、府能隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。


府能隧道とは?

府能隧道の外観

府能隧道は徳島県に存在する旧国道438号の一部で、大正11年(1922年)に竣工された煉瓦巻構造の隧道である。

延長180m、幅員3.8m、高さ4.2mという規模を持ち、当時は馬車すら通れない狭い峠道を、村人総出の手掘り作業で切り開き、交通の生命線とした歴史を持つ。

現在は近代土木遺産にも認定されており、美しい煉瓦造りの姿が残されているが、内部は漏水のため覆工され、一部では鉄板やライナープレートで覆われている。

周辺道路は極端に狭く、見通しの悪い酷道が続き、すれ違いのためにバックを強いられることも多い。

昼間であっても薄暗く湿った空気が漂い、近づく者の足を鈍らせる不気味さを湛えている。


府能隧道の心霊現象

府能隧道で噂される心霊現象は、

  • 兵隊の霊が隧道内に立っている
  • 隧道内部から人の声がする
  • 車で通過すると窓の外に無表情な人影が並走する
  • 内部でエンジンが急に停止する

である。以下、これらの怪異について記述する。

兵隊の霊が隧道内に立っている

もっとも有名なのは、夜間や早朝に隧道を進むと、坑口からわずか数十メートル付近に古びた軍服姿の兵隊が直立しているという現象である。

振り返ると姿はなく、進んでも追いつけず、やがて視界から霧のように消えるという。

隧道内部から人の声がする

無人のはずの隧道内で、低く押し殺した声や足音が響くという証言がある。

反響では説明できない不規則な音であり、耳を澄ますと複数人が会話をしているように聞こえる。

車で通過すると窓の外に人影が並走する

通行中、窓の外に沿って無表情な人影が歩くように並走することがあるという。

速度を上げても影は一定の距離を保ち、坑口を抜けた瞬間に掻き消える。

内部でエンジンが急に停止する

何の前触れもなく車のエンジンが止まり、再始動が効かなくなる事例もある。

外に出てみると異様に静かで、まるで時間が止まったかのような感覚に襲われるという。


府能隧道の心霊体験談

ある地元の男性は、深夜に佐那河内村側から府能隧道へ向かった際、坑口付近で強い湿気とともに古い革靴の匂いを感じたという。

車を進めると、ライトの光が届く範囲に、ぼんやりと軍服姿の男が立っていた。

顔は影になって判別できなかったが、その姿は微動だにせず、こちらを見つめているように感じられた。

恐怖に駆られアクセルを踏み抜くと、隧道を抜ける直前、助手席側の窓を「コン」と叩く音がした。

後日、その男性の車のドアには、手形のような跡が残っていたという。


府能隧道の心霊考察

府能隧道は大正期に手掘りで建設された歴史を持ち、多くの人手と長期間の作業を要した。

その過程で事故や病に倒れた者がいた可能性は高く、兵隊の霊とされる存在も、戦没者だけでなく、軍服姿で作業に関わった工事関係者や、戦時中にこの道を行き来した兵士の残留思念である可能性がある。

また、隧道内部の異常な湿気や漏水は音を変化させ、訪れる者の感覚を狂わせる。

さらに一車線の極端な狭さと圧迫感が、心理的恐怖を増幅し、幻視や幻聴を引き起こしやすい状況を生み出していると考えられる。

しかし、複数の証言が似通っていることからも、単なる錯覚や環境要因だけでは説明しきれない部分が残る。

府能隧道は、近代土木遺産の美しい構造の裏に、確かに何かを宿し続けている場所である。


府能隧道の地図

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【管理人】狐憑きのたる

全国のウワサの心霊スポットを調査し、その魅力と恐怖を皆さんにお届けしています。