愛媛県松山市にある湧ヶ淵は、美しい渓谷であると同時に、大蛇が美女に化けて人を淵へ誘い込んだという伝説が残る場所である。今回は、湧ヶ淵にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
湧ヶ淵とは?

湧ヶ淵(わきがふち)は、愛媛県松山市末町に位置する石手川流域の渓谷である。
石手川ダムの下流、ホテル奥道後から上流にかけて朱色の欄干が連なる遊歩道が整備され、四季折々の自然が訪れる者を迎える。
この地は古来より「大蛇の棲む淵」として恐れられてきた場所である。
江戸時代初期、夜ごと美女に化けて人々を惑わせ、淵に引きずり込む大蛇がいたと伝わる。
討伐に立ち上がった武士が鉄砲を放った瞬間、大地を揺るがすほどの咆哮と共にのたうち回る大蛇の姿が現れ、翌朝には巨大な死骸が浮かんでいたという。
その首骨は今も祠に祀られ、竜姫宮と呼ばれている。
また、石手寺には「石剣で大蛇の首を斬った」という別の伝承が残されており、大蛇の頭蓋骨が供えられているとされる。
夏目漱石もこの地にまつわる伝承を聞き、「蛇を斬った 岩と聞けば 淵寒し」と一句を残している。
湧ヶ淵の心霊現象
湧ヶ淵の心霊現象は、
- 淵の近くで女性の霊を目撃する
- 写真を撮るとガイコツのような白いもやが映る
- 夜、遊歩道で背後から足音がついてくる
- 水面から蛇のようにうねる黒い影が浮かび上がる
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず最も有名なのは、夜の遊歩道に現れる女性の霊である。
着物姿で水辺に立つ女が見つめ返すと、顔が次第に崩れ落ち、骸骨のような笑みを浮かべるとされる。
その姿を見た者は強い頭痛や吐き気に襲われると噂される。
また、湧ヶ淵で撮影された写真には、肉眼では見えなかった「頭蓋骨の形をした白いもや」が写り込むことがある。
まるで討たれた大蛇の怨念が霧となって漂い続けているかのようである。
さらに、深夜に訪れると、人気のないはずの遊歩道で「カツ、カツ」と硬い足音が後ろからついてくるという。
振り返ると誰もおらず、ただ冷たい風が吹き抜けるのみである。
最後に、淵の水面を凝視していると、蛇のように長く黒い影が揺らめきながら浮かび上がるという証言がある。
それは水に映る影ではなく、実体を持った何かが水面を這い上がろうとしているかのようである。
湧ヶ淵の心霊体験談
ある男性が夜の散歩中、湧ヶ淵の欄干近くで女性の声を聞いたという。
振り返ると水辺に若い女が立っており、白い顔でこちらを見つめていた。
驚いて目を逸らした一瞬後、そこには誰もおらず、代わりに骸骨のような顔が水面に浮かび上がっていたと証言している。
恐怖のあまりその場を逃げ出したが、後日現像した写真には白い頭蓋骨がいくつも写り込んでいたという。
湧ヶ淵の心霊考察
湧ヶ淵に残る心霊現象の多くは、大蛇伝説と深く結びついていると考えられる。
美女に化けて人を淵へ誘った大蛇は、討たれた今もなお怨念を抱き、人の姿や骸骨の影として現れているのではないか。
また、写真に写るもやや頭蓋骨は、単なる光の反射や水蒸気では説明がつかない不可解さを持つ。
霊体が形を変えて現れていると解釈するのが自然であろう。
足音や黒い影は、この地に刻まれた恐怖の記憶そのものが具現化したものかもしれない。
大蛇の伝承が絶えることなく人々に語られ続けてきたのは、単なる昔話ではなく、今なお「何か」がここに棲みついている証左である。
湧ヶ淵は、美しい自然景勝地でありながら、その深淵には古の呪いと怨念が眠る場所であるといえる。
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