高知県の山深く、門谷峡の奥にひっそりと口を開ける別府峡隧道。コンクリートで固められることのない素掘りのトンネルであり、昼でも薄暗く湿気が漂う。夜になると、川の方から光の玉がふわりと飛んでくるという噂があり、かつて心中が多かった場所とも語られている。今回は、別府峡隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
別府峡隧道とは?

別府峡隧道は、高知県の紅葉名所「別府峡」近くに存在する素掘りの隧道である。
場所は西熊別府林道の途中に位置し、昭和63年に竣工したとされる。
全長は約20メートル、幅員約4メートル、高さ約4.5メートルと小規模ながら、岩を直接刳り貫いた「完全素掘り」の構造を保っている点が特徴的である。
この隧道は舗装化の波を受けることなく、今もなお当時の姿を残している。
岩肌は生々しく、内部は湿気を帯び、ひんやりとした空気が滞留している。
周囲は門谷峡と呼ばれる深い渓谷に囲まれており、昼でも薄暗く、人の気配がほとんどない静寂の中に隧道はひっそりと佇んでいる。
全国トンネルリストにはこの隧道の名が掲載されておらず、正式な名称は不明である。
そのため、便宜的に「別府峡隧道」と呼ばれている。
別府峡隧道の心霊現象
別府峡隧道の心霊現象は、
- 夜になると川の方から光の玉が飛んでくる
- トンネル周辺で得体の知れない“気配”を感じる
である。以下、これらの怪異について記述する。
夜の別府峡では、川沿いから淡い光がふわりと浮かび上がり、ゆらゆらと漂いながら隧道の方へ向かってくるという話がある。
光は青白く、形を保ったままゆっくりと流れて消える。
一部では「心中者の魂が川を渡っている」と噂され、その光を見た者は“声をかけてはいけない”とも言われている。
また、隧道周辺ではしばしば「誰かに見られているような感覚」を覚えるという。
風もなく、足音もないはずの静寂の中で、背筋に冷たいものが走ると語る人は少なくない。
明確な姿を見た者はいないが、「何かが確かにいる」と感じさせる空気が、この場所には漂っている。
別府峡隧道の心霊体験談
夜に別府峡隧道を訪れたある探索者は、トンネルへ向かう途中、川辺でふと白い光を見たという。
それは蛍のように小さくもなく、車のライトとも違う柔らかな光で、静かに宙を漂い、やがて隧道の方へと消えていった。
その後、トンネルに近づくにつれ、周囲の音が不自然に遠のき、ただ自分の鼓動だけが聞こえたと語っている。
彼はその光を“何かを見てはいけないもの”のように感じ、言葉を発することなくその場を離れたという。
別府峡隧道の心霊考察
別府峡隧道周辺は渓谷特有の湿気と温度差が大きく、川霧やガスが光を反射して不思議な現象を起こすことがある。
しかし、夜ごと同じ方角から現れるという光の報告は後を絶たず、単なる自然現象とは言い切れない。
また、昔この地域では心中が多かったという言い伝えがあり、光の玉はその魂が今も川を越えて漂っている姿なのかもしれない。
別府峡隧道に満ちる重い静けさは、それを感じ取る者にしかわからぬ“何か”を今も伝えているようである。
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