愛媛県今治市にそびえる近見山には、古くから不可解な音や姿なき気配が囁かれている。地元では「何かいる山」と恐れられており、その怪奇な現象に震え上がった者も少なくない。今回は、近見山にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
近見山とは?

近見山(ちかみやま)は、愛媛県今治市波止浜町に位置する標高243.5mの山である。
瀬戸内海国立公園に指定されており、山頂の展望台からは来島海峡大橋や芸予諸島、西日本最高峰である石鎚山を望むことができる。
その歴史は古く、養老4年(720年)には行基が山頂に堂宇を建て、弘仁年間には弘法大師によって再興されたと伝わる。
かつては百坊が立ち並び、学僧・凝然もここで著作を残したとされるほど、信仰と学問の拠点であった。
しかし幾度も戦火に見舞われ、やがて山麓へ移転を余儀なくされている。
現在は観光やハイキングの名所として知られる一方で、地元では「夜の近見山には決して近づくな」と警告される不気味な場所としても語り継がれている。
近見山の心霊現象
近見山の心霊現象は、
- 夜になると竹を噛み砕くような「バキバキ」という音が響く
- 誰もいないはずなのに、奥から低いうなり声が聞こえる
- 音の正体を確かめに行くと、何も存在していない
- 肝試しに訪れた者が恐怖のあまりパニックになって逃げ帰る
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず特筆すべきは、夜の闇に響く「竹を折る音」である。
まるで何者かが力任せに竹を噛み砕いているような異様な音が、深夜になると斜面の奥から聞こえてくるという。
この音は一度耳にすると忘れられず、動物の仕業だと思って近づいた者もいるが、音の発生源には何もいなかったと語られている。
さらに、竹の音とともに耳に届くのが「低いうなり声」である。人間とも獣ともつかない重苦しい声が、山の奥底から漏れ聞こえるのだという。
息を殺して耳を澄ませば、その声はまるでこちらを睨みつけているかのように感じられると証言されている。
肝試しに訪れた若者が、この音と声を耳にして錯乱状態となり、山を転げるように逃げ帰ったという逸話も残されている。
地元では「決して音のする方向に近づいてはならない」と戒められているのである。
近見山の心霊体験談
ある今治市内の住民は、友人と共に夜の近見山に訪れた際、奇妙な体験をしたという。
山道を登っていたとき、背後から「バキッ、バキッ」と竹を裂く音が追いかけてくるように響き渡った。
振り返っても闇の中には何もいない。しかし音は確かに近づいてきており、ついには足元まで迫ってくる感覚に襲われた。
恐怖のあまり叫び声を上げ、必死で山を下りたが、その後もしばらく耳には「低いうなり声」が残響のようにこびりついて離れなかったという。
近見山の心霊考察
近見山に残る怪奇音の正体は不明である。山には古代から信仰が根づき、行基や弘法大師の伝承も残されていることから、信仰と死者の念が絡み合っている可能性がある。
戦火によって焼かれた過去や、かつて存在した百坊の僧たちの怨念が、今も山に宿っているのかもしれない。
動物の仕業であれば痕跡が残るはずだが、実際には何も発見されていない。
にもかかわらず、多くの人間が同じ現象に遭遇していることから、自然現象だけでは説明がつかない。
夜の近見山に足を踏み入れる者は少なくないが、その大半が「二度と行きたくない」と口を揃える。
景勝地であると同時に、今もなお「何かが潜む山」であることは間違いないのである。
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