福岡県宮若市に位置する力丸ダムは、本来であれば治水や水供給を担う公共インフラである。だが、夜な夜な湖面に現れる霊の姿や、橋の上で感じる異様な気配。そこに足を踏み入れた者たちは、口を揃えて「何かがおかしい」と語る。今回は、力丸ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
力丸ダムとは?

力丸ダムは、福岡県宮若市に位置する県営の多目的ダムである。
建設のきっかけは、1953年(昭和28)6月に発生した九州北部豪雨である。
この災害により死者・行方不明者1001名、浸水家屋約45万棟、被災者数は実に100万人を超える未曾有の被害となった。
この水害を契機に、治水・上水道用水・工業用水の供給を目的とした多目的ダムの建設が計画され、1959年(昭和34)から着工。1965年(昭和40)に完成を迎えた。
なお、ダムの名の由来となった「力丸」は、水没した旧集落の名称である。
平家の落人伝説に端を発し、宗像大社の大宮司に仕えていた一族がこの地に定住し、「力丸」と名乗ったとされている。
力丸ダムの心霊現象
力丸ダムの心霊現象は、
- ダム湖に女性の霊が現れる
- 夜中に橋の上からこちらを見下ろす霊の目撃談
- 霊に引きずり込まれるように事故が起きる
- 湖面から手が伸びてくる幻視
- 録音機器が故障する、不可解な声が入る
である。これらの現象は、心霊スポットとされる場所の中でも特に凄惨な事件が相次いだ背景を持つ力丸ダムならではの異様な空気感によって、より現実味を帯びている。
以下、これらの怪異について記述する。
まず最も有名なのが、1979年に発生したOL強姦殺人事件である。
犯人は、車を運転中の女性を強引に停車させ、無理やり同乗。力丸ダムまで連れて行き、暴行の末に絞殺した。
遺体は近くの雑木林に全裸で遺棄され、ダム周辺には女性の悲鳴が今なお木霊するとのウワサがある。
同年、もうひとつの凶悪事件が発生する。
保険金目当ての殺人である。
暴力団の会長が自らの妻に2億円の保険をかけ、運転手を雇って湖畔まで妻を誘導。
道中、車ごと湖に突っ込ませ殺害を図った。
だが皮肉なことに、犯行に加担した運転手もそのまま死亡。二重の死によって呪われたかのような空間となった。
さらに1989年には、中間市で女性が拉致され力丸ダムに連れ込まれた挙句に殺害、死体は雑木林に遺棄された。
加害者は後に無期懲役となったが、彼が車内で流していた奇妙な音声や「霊の導きで来た」という供述も記録に残っている。
1992年には湖底から白骨化した男性の遺体が見つかった。
軽トラックごと湖に沈んでおり、状況から自殺と見られているが、真相は闇の中である。
1994年には男女間のトラブルを巡るリンチ事件が発生。
若者たちが被害者を暴行し、力丸ダムの吊り橋から突き落とし殺害した。この橋は今でも夜中に人影が浮かび上がるという。
ダムの横に立つ慰霊碑には、殉職者の名が刻まれている。
だがその静けさがかえって異様な迫力を放っており、夜に訪れれば強烈な圧迫感と冷気に襲われることだろう。
力丸ダムの心霊体験談
夜の肝試しとして訪れた者が、湖面を漂う白い人影を目撃したという。
カメラを向けるとシャッターが切れず、録音機器には「助けて」という女性の声が入っていたともいう。
別の人物は、吊り橋の上で急に動けなくなり、背後から肩をつかまれたという感覚に襲われた。しかし振り返っても誰もいない。
帰宅後に体調を崩し、数日間高熱にうなされたという報告もある。
力丸ダムの心霊考察
力丸ダムにおける心霊現象の背景には、明確な事件史が存在している。
それも一つや二つではない。強姦、殺人、保険金詐取、自殺、暴行――ダム湖に沈んだ命の数だけ、そこに「理由」がある。
また、ダム建設により水没した集落の存在も見逃せない。
生活の場を奪われた者たちの無念、祀られていた神々の移転、慰霊の不備。
霊的なバランスが崩れた結果、力丸ダムは「ただの貯水池」ではなく、「霊の棲み処」と化した可能性がある。
心霊現象は、単なる噂話ではなく、この地に流れ続ける血と涙の記憶の具現なのかもしれない。
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