徳島県阿南市に位置する福井ダムには、かつて起きたとされる凄惨な事件や不可解な現象にまつわる心霊のウワサが存在する。人けのない夜のダム湖に現れる少年の霊、不気味な異音、そして誰もいないはずのトイレで起きる怪奇現象――今回は、福井ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
福井ダムとは?

福井ダム(ふくいダム)は、徳島県阿南市福井町に建設された重力式コンクリートダムである。
二級河川・福井川中流域に位置し、高さ42.5メートル、総貯水量は475万立方メートルを誇る。
洪水調節および不特定利水を目的とした県営の治水ダムであり、1995年(平成7年)に完成した。
福井川は流路延長14km、流域面積33.7km²を持ち、かつては台風期以外でも豪雨に見舞われ、鉄砲水による被害が頻発していた。
特に昭和27年には集中豪雨によって6名が死亡、360戸の家屋が被災するという甚大な災害も発生している。
この地域の治水対策として昭和42年に予備調査が再開され、長い年月をかけて福井ダムが完成。
その下流にはかつて170mのローラー滑り台を備えた福井ダム公園も整備されたが、2013年には遊具がすべて撤去され、現在ではひっそりとした公衆トイレのみが残されている。
福井ダムの心霊現象
福井ダムの心霊現象は、
- 少年の霊が現れる
- 子どもの声が聞こえる
- ダム近くの公園トイレで、水が勝手に流れる
- 不気味な異音が聞こえる
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、最もよく語られるのは「少年の霊が出る」という話である。
夜間、ダム湖のほとりを歩いていると、青白い顔をした少年が無言でこちらを見つめているという目撃談がある。
彼は声を発さず、ただじっと立ち尽くしている。その姿はいつの間にか霧の中に溶けるように消えていくという。
次に恐ろしいのは、ダムにまつわる殺人事件のウワサである。
かつて実の母親が、自身の子供2名をダム湖に突き落として殺害したという。
公式な記録は不明であるが、地元ではこの事件を知る者も多く、湖畔で子供の泣き声が聞こえることがあるという証言が後を絶たない。
また、ダム下流に位置する福井ダム公園では、使われていないはずの公衆トイレの水が勝手に流れる現象が頻発しているという。
誰もいないはずのトイレから流れる音が聞こえ、確認すると水が勢いよく流れていた。
修理しても直らないこの現象は、今でも不可解なままである。
さらに、深夜のダム周辺では「ゴン」「ガタッ」といった異音が突如として響くことがある。
金属を引きずるような音が耳元で聞こえ、あたりを見回しても誰もいない。
地元の人々は「夜には近づかないほうがいい」と口をそろえる。
福井ダムの心霊体験談
ある若者のグループが、深夜の福井ダム公園を肝試しで訪れたときのことである。
冗談半分でトイレに入った一人の男性が、個室の扉を閉めようとした瞬間、誰かが外からノックしてきたという。
仲間だと思いドアを開けると、そこには誰もいなかった。不審に思い外へ出ようとしたその時、水が突然勢いよく流れ、鏡の奥に子供の顔が映ったと語る。
彼は青ざめたまま車に戻り、その場を離れたが、車中でも後部座席に小さな手形が浮かび上がっていたという。
翌日、その手形はどんなに拭いても消えることはなかった。
福井ダムの心霊考察
福井ダムにまつわる心霊現象は、いずれも「水」に深く関連している点が興味深い。
少年の霊、湖での殺人事件、トイレでの怪異、そして不可解な異音――そのすべてが、水辺という共通の舞台で起きている。
とりわけ、母親による子供の殺害というウワサは、ダム湖に残された“未浄化の念”を象徴するかのようである。
湖底に沈む何かが、いまだ救われぬ魂の叫びとして現れているのかもしれない。
また、公園の遊具がすべて撤去されたという事実も、何かしらの因果を感じさせる。人が集まる場を避けるかのように、福井ダム公園は静寂と違和感に包まれた場所へと変貌した。
地元住民の間では、夜の訪問は控えるべき場所として知られている福井ダム。
水面に映るのは、果たして自分の姿だけだろうか。
静寂の闇の中、ふとした瞬間に聞こえる水音や足音――それは、そこに存在するはずのない者たちからの、何かの“訴え”なのかもしれない。
コメント