大分県別府市の山奥にひっそりと存在する「蛇の湯」。この場所には、かねてより数々の心霊現象がウワサされている。今回は、蛇の湯にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
蛇の湯とは?

蛇の湯とは、大分県別府市にある野湯であり、秘湯マニアや温泉好きの間ではよく知られている場所である。
国道から約2.6キロ奥に入り、悪路を抜けた先に現れる混浴の天然温泉で、直径2〜3mほどの岩風呂が四つ並び、浴槽ごとに湯温が異なるという特徴を持つ。
設備は最低限の脱衣小屋のみで、トイレや売店は存在せず、完全に自然に囲まれた状態の中で入浴するスタイルとなっている。
道は非常に荒れており、ダートの林道のような箇所も多く、訪れる者には相応の覚悟が求められる。
野性味あふれるその雰囲気が、多くの人を惹きつける一方で、「何か」が潜んでいそうな不気味さを湛えているのも事実であるという。
蛇の湯の心霊現象
蛇の湯の心霊現象は、
- 腰から下のない女性の霊が写真に写る
- 浴槽に浸かっていると女性の泣き声が聞こえる
- 夜中に声がするなどの心霊音の発生
- 自殺者の霊が付近に現れる
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、最も有名な現象として語られているのが「腰から下のない女性の霊」である。
これは、蛇の湯にある簡易的な小屋の前で撮影された写真に、上半身だけの女性が佇んでいたというものだ。
霊の姿はぼやけてはおらず、はっきりと「膝下から下」が存在せず、地面の上に浮かぶように立っていたという。
次に語られるのが「女性の泣き声」である。
入浴中、周囲に誰もいないはずの状況で、耳元で突然「ヒィ…ヒィ…」という女性のすすり泣く声が聞こえてくるという。
声の主は姿を現すことなく、空間だけが湿気を帯び、異様な寒気が湯面を這っていく。
また、夜中に蛇の湯付近を通ると、突然誰かの「声」が聞こえるという体験談も後を絶たない。
会話のような声、すすり泣き、時には助けを求めるような呻き声もあるというが、周囲には人影は一切ない。
録音しても何も入っておらず、聞いた者にしか感じ取れない“霊の波長”とも言われている。
そして最も恐ろしいのが、蛇の湯一帯で発生した20件近くの自殺のウワサである。
詳細な記録は不明ながら、吊り橋や崖、湯場そのもので命を絶ったとされる人間が多数いるとされ、その霊が今もなお成仏できずに彷徨っているという。
蛇の湯の心霊体験談
これは、実際に蛇の湯を訪れた人物による体験談である。
別府の鍋山の湯で殺人事件が起きた年の秋、友人4人と共に心霊スポット巡りをした際の出来事である。
蛇の湯へ向かう途中、左手に立てられた注意書きの看板に気味の悪い文言が書かれており、その不気味さに惹かれて写真を撮影した。
その瞬間、後部座席に座っていた友人が突然悲鳴を上げた。
「今、後ろにガウン着た女の人が立ってた……!」
皆、見間違いだろうと笑い飛ばそうとしたが、内心では異様な空気を感じ取っていたという。
道を進むうちに左手に供え物であふれた献花台が現れた。
それを見た途端、誰もが言葉を失い、ここがただならぬ場所であると直感した。
そのまま蛇の湯を離れ、夜景スポットへ移動したところで、写真を確認してみた。すると、そこにはあり得ないものが写っていた。
看板の横に、大きな女の顔。その下には顎のない女性の顔、そして少年らしき顔が覗くように写り込んでいた。見るだけで息が詰まり、誰もが言葉を失った。
その後、自宅の非常階段で、当時の話を友人と電話していた時である。
「鍋山の湯っちゃ!」と地名を言った瞬間、電話が“ザーッ”という砂嵐の音に変わった。
一瞬の沈黙の後、再び声が戻ったが、相手には何も聞こえていなかったという。
あの音は、どこから来たのか。あの場に「何」がいたのか。
誰にも分からないまま、恐怖だけが残された。
蛇の湯の心霊考察
蛇の湯で頻発する心霊現象の背景には、幾つかの要因が複雑に絡み合っていると考えられる。
第一に、近隣の鍋山の湯で実際に起こった2010年の女性看護師殺人事件の影響が挙げられる。
被害者の無念や恐怖が、近隣の霊的空間に深く根を下ろしてしまった可能性は否定できない。
また、蛇の湯一帯での複数の自殺例も、この地を“霊的に異常な場所”へと変えてしまった原因のひとつである。
自然に囲まれ、外界から隔絶された環境は、人の精神を異常にさせる側面を持ち、それが霊的存在と接触しやすい“隙”を生んでいるのかもしれない。
蛇の湯では、“見える者”と“聞こえる者”が明確に分かれるとも言われている。
ある者には霊がはっきりと視え、ある者には声だけが届く。
それは、この地に満ちる霊的エネルギーが、訪れた人間の“波長”に応じて異なる形で干渉している証拠であろう。
この地に足を踏み入れることは、まさに“見えない世界との接触”である。
蛇の湯は、ただの秘湯ではなく、今なお消えぬ記憶と哀しみが染み込んだ“現代の霊場”なのである。
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