高知県の四万十川沿いに位置する「君が淵」は、平家の落人伝説とともに、悲恋と怨念が今も残るといわれる場所である。今回は、君が淵にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
君が淵とは?

君が淵は、高知県四万十市の四万十川支流沿いに位置する深い淵である。
その名の由来は、平家の落人と地元の娘・お君にまつわる悲恋の伝承にある。
壇ノ浦の戦いで敗れた平家の落人の一行が、野稲尻の奥地に逃れ、密かに暮らしていた。
その中の一人である若武者は、里に降りて百姓として生きるうち、地元の娘・お君と深い仲となった。
しかし、身分の差が厳しい時代において二人が結ばれることは叶わず、絶望の末、夜の断崖から身を投げたと伝えられている。
その後、里人はお君の怨念に悩まされ、小祠を建てて霊を慰めた。
現在ではその地は「君が淵」と呼ばれ、四季折々の美しさの裏に、悲恋の影を宿したまま静かに佇んでいる。
君が淵の心霊現象
君が淵の心霊現象は、
- 夜に女性のすすり泣く声が聞こえる
- 淵を覗き込むと水面に白い着物姿の女性が映る
- 写真を撮ると顔のような影が浮かび上がる
- 足場の悪い断崖付近で、背中を押されたような感覚に襲われる
である。以下、これらの怪異について記述する。
昼間に訪れると、四万十川の穏やかな流れと深い緑に包まれた静寂の地である。
しかし、夕暮れが近づくにつれ、空気が急に冷たく変わるという。
淵は木々に覆われており、覗き込もうとしてもその全貌を見渡すことはできない。
中には、淵を覗き込もうとした瞬間、背後で足音を聞いたという人もいる。
誰もいないはずの場所で、草を踏みしめる音が近づいてきたという証言もある。
また、写真を撮った際、水面に人の顔のような影が写り込んだ例も報告されている。
光の反射では説明しきれない位置に浮かぶそれは、まるで覗き込む者を見返すかのようである。
断崖付近には「危険」と書かれた看板が立っているが、転落事故の防止だけでなく、古くから“この先に踏み込むな”という意味合いも含まれていると地元では囁かれている。
君が淵の心霊体験談
ある訪問者は、昼下がりに祠の前で写真を撮ったところ、誰もいないはずの背後に長い髪の女性の姿が写っていたという。
同行していた友人も現場では何も見ておらず、帰宅後に写真を確認して初めて気づいたそうだ。
また、別の人は、夕方に淵を覗き込んだ際、水面が不自然に揺れ、風もないのに波紋が広がったという。
まるで、誰かが水中から手を伸ばしたかのようで、恐怖のあまりその場を逃げ出したと語っている。
君が淵の心霊考察
君が淵にまつわる現象の多くは、単なる風や水の音、光の反射といった自然現象で説明できるかもしれない。
しかし、そこに込められた“人の想い”は、時間を超えて場所に残り続けることがある。
お君が身を投げたという断崖は、現代の人々にとっては風景の一部にすぎない。
だが、夜の静けさの中で立ち止まれば、誰かが確かにそこにいた気配を感じるという。
愛と絶望、そして祈りが交錯するこの場所では、風が木々を揺らす音さえも、まるで彼女の嘆きのように聞こえてくる。
君が淵の“美しさ”は、哀しみと共に存在しているのである。
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