水辺には霊が集まりやすいという。そんな“霊を引き寄せる場所”として、かねてより噂されてきたのが――大分県別府市にある「神楽女湖(かぐらめこ)」である。今回は、神楽女湖にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
神楽女湖とは?

神楽女湖は、大分県別府市の鶴見岳南東側山腹に位置する、周囲およそ1kmの静かな湖である。
阿蘇くじゅう国立公園の一部でもあり、観光地としても知られている。
湖の名の由来は、平安時代にこの地に住んでいたとされる「歌舞女(かぐらめ)」という神に舞を捧げる女性にちなむという。
神聖な存在として崇められていたその名が、この湖に受け継がれたのだ。
6月から7月にかけては湖畔にある花菖蒲園で約30万本の菖蒲が咲き誇り、訪れる者の目を楽しませる。
しかし、その美しさの裏に――人知れぬ“何か”が潜んでいることを、多くの目撃者が証言している。
神楽女湖の心霊現象
神楽女湖の心霊現象は、
- 少女の霊が出現する
- 車に乗せると消える、もしくは事故に遭う
- 「子どもに話しかけないでください」という看板が過去に立てられていた
- 道路の真ん中に立つ“切ってはならぬ桜の木”の呪い
である。以下、これらの怪異について記述する。
少女の霊が出現する
神楽女湖の周辺では、雨の日の夕暮れ、もしくは夜になると、小学生ほどの少女が一人で佇んでいる姿が目撃されるという。
白い服を着ており、髪は肩まで垂れていて、どこか生気のない瞳で立ち尽くしている。
この少女は、通りかかった車に向かって「迷子になったから送ってほしい」と語りかけてくる。
哀れに思った運転手が車に乗せると、不思議なことにしばらくして彼女の姿が突然消える。
または、車が何らかの原因で事故を起こす――という報告が相次いでいる。
これが一時期、神楽女湖の周辺に「子どもに話しかけないでください」という看板が立てられた理由であると言われている。
看板の背景にある少女の死亡事故
この現象の背景には、実際に起きたという少女の死亡事件がある。
神楽女湖の近くには「少年自然の家」が存在しており、ある年、オリエンテーリング中の小学5年生の少女が突如行方不明となった。
捜索の結果、少女は神楽女湖近くの雑木林で遺体となって発見されたという。
死因は「転落死」とされているが、詳細は不明のままである。
少女の霊は、今なおその場所に囚われているのだろうか。
切ってはならぬ桜の木
神楽女湖に向かう道の途中、かつて“道路の真ん中”に不自然に立っていた一本の桜の木があった。
その桜は伐採しようとすると必ず“災い”が起こると恐れられていた。
重機を使って木を倒そうとした作業員が重傷を負ったり、原因不明の体調不良に襲われたり――そんな事例が立て続けに起きたのである。
やがて誰も木に手を出さなくなり、道路の中央という異様な位置にあるにもかかわらず、長らくそのままにされていた。
2001年にようやく移植されたが、それ以降も木が立っていた場所で車のスリップ事故が多発しているという。
神楽女湖の心霊体験談
ある人物は、雨の降る夜に神楽女湖の近くを車で走行していた際、道路脇に立つ少女に遭遇した。
傘も差さず、濡れた髪のままじっとこちらを見つめていたという。
「送って」と言われたが、どこか言葉に感情が欠けていた。
怖くなって無視して走り去ろうとしたところ、急にハンドルが利かなくなり、車がスリップ。
幸い事故には至らなかったものの、ふとバックミラーを見ると、助手席に少女の姿が映っていた――という。
次の瞬間には、何事もなかったかのように少女も気配も消えていたという。
神楽女湖の心霊考察
神楽女湖が心霊スポットとして知られるようになった背景には、いくつかの要因がある。
まず第一に、名前の由来そのものが神聖な伝説に基づいている点。
舞を奉納する女性=神楽女が住んでいたという話は、この地に特別な“霊的磁場”が存在することを暗示しているようにも感じられる。
さらに、水辺という環境も重要だ。水は霊を引き寄せると古くから信じられており、特に静まり返った湖は“あの世とこの世の境”とされることもある。
そこに加えて、実際に少女が死亡したという事故の噂。
しかもその死が、不可解な状況の中で起きたとされることが、霊の出現と結びつけられていったのであろう。
そして「切ってはならぬ桜の木」という別種の怪異もまた、神楽女湖の“呪われた土地”としてのイメージを一層強固なものとした。
悲しみ、恐怖、祟り――様々な感情と物語が折り重なった結果、この場所は「触れてはならぬ場所」として、今日もひそかに語られ続けているのである。
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