広島県庄原市にある神龍湖は、四季折々の自然美と観光地としての顔を持つ一方で、数々の不可解な出来事や不穏なウワサが語り継がれている場所でもある。美しさの裏に潜む闇――今回は、神龍湖にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
神龍湖とは?

神龍湖(しんりゅうこ)は、広島県庄原市の帝釈峡に位置する人造湖である。
石灰岩の峡谷に沿って大正時代に完成し、総延長8km、周囲24kmに及ぶ壮大な景観を持つ。
春は新緑、秋は紅葉と、四季折々の自然が訪れる者の目を奪う風光明媚な観光地として知られており、湖上を遊覧船で巡ることもできる。
湖畔には紅葉橋、桜橋、神龍橋といった趣ある橋が点在し、古びたトンネルを抜ける遊歩道コースも整備されている。
観光地としては魅力に溢れる一方で、地元では昔から「日暮れ以降に近づくな」と語り継がれてきた。
そこには、あまりにも多くの“理由”が潜んでいるのである。
神龍湖の心霊現象
神龍湖の心霊現象は、
- 湖畔に佇む男性の霊の目撃
- 湖面から現れる水没者の幻影
- 過去の観光船事故による子どもの霊の出現
- カップルの心中現場での霊的な声
- 深夜、人気のない時間帯に現れる“呼ばれる”感覚
- 自殺者が湖畔から水面へ引き込まれるという噂
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず最も多く語られるのが、「男性の霊」の存在である。
夜、橋のたもとや湖畔のトンネル付近に立ち尽くす黒い影。
その姿はぼんやりと霞み、声をかけても返事はない。
だが、背を向けるとすぐ後ろに“気配”を感じるという証言が相次ぐ。
さらに、この湖には“水から上がってくる者”がいるという。
深夜に静まり返った湖面を見つめていると、波紋もないのに水中から何かが浮かび上がるような錯覚に襲われる。
それは子どものように小さな影であり、顔まで見ようとした者は、身体が動かなくなるという。
昭和の中頃、この湖では観光船の沈没事故があったとされている。
地元住民によれば、多くの小学生が命を落としたというが、公に語られることは少ない。
だが、湖上に霧がかかるとき、船の汽笛のような音と共に、小さな笑い声が聞こえるという証言が残されている。
また、カップルの心中事件も数件確認されており、事件現場近くの橋では、夜に手を繋いだカップルの霊が消える瞬間を見た、という者もいる。
「あれは本当に人間だったのか」という疑念と恐怖を語る者が後を絶たない。
極め付きは、“呼ばれる”感覚だ。深夜、誰もいないはずの遊歩道を歩いていると、不意に名を呼ばれるような声が耳元に響く。
振り返っても誰もいない。しかし、その声は確かに「こちらへおいで」と語っているという。
神龍湖の心霊体験談
ある晩秋の夕暮れ、湖畔を訪れた一人の釣り人の話である。
釣り場としても知られる神龍湖に、彼は夕方の静寂を楽しみに訪れた。
しばらく釣りをしていると、遠くの橋の上に誰かが立っているのが見えた。
こちらを見ているように感じ、気味が悪くなって目を逸らした。
だが、次の瞬間、釣り糸が何かに引っかかった。
湖面を見ると、水中から無数の手のようなものが、彼の足元へと伸びていたという。
急いで道具を放り出し、車へと駆け戻ったが、最後まで背後から誰かの視線を感じ続けたという。
後日、彼が橋のあたりに戻ると、そこには“数年前に自殺があった”と書かれた小さな看板が立っていた。
神龍湖の心霊考察
神龍湖には、多くの不幸と死が積み重なっている。
観光船の事故、心中、自殺——いずれも水にまつわるものであり、この湖が“魂を留める場所”であるかのような印象を与える。
石灰岩の峡谷に囲まれた静かな水面は、一見すると美しく、心を洗われるようである。
だが、その静寂こそが、死者の声を閉じ込める“結界”となっている可能性は否定できない。
また、「夕方から夜にかけて近づくな」という地元の言い伝えも、単なる迷信では片付けられない。
実際、心霊現象の多くはこの時間帯に集中している。
魂の世界と現世の境界が曖昧になる「逢魔が時」、この湖ではそれが特に濃く現れるのかもしれない。
神龍湖は、紅葉の名所として多くの人々に愛されている。
しかし、その美しさの裏に、深く重い“記憶”と“影”が潜んでいることを忘れてはならないのである。
コメント