広島県に存在する幕の内トンネルは、過去に起きた悲惨な事故や凄惨な事件の記憶がいまだ残る場所であり、現在でも数多くの心霊現象が報告されている。今回は、幕の内トンネルにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
幕の内トンネルとは?

幕の内トンネルは、広島市安佐北区可部町と安佐町を結ぶ幹線道路にある交通要所のひとつである。
かつてこの地域には「幕の内峠」と呼ばれる急勾配と九十九折の難所が存在し、住民にとっては長年の悩みの種であった。
明治時代にようやく道が整備されたものの、そのカーブの多さは「九十九曲り」と称され、依然として危険な場所として知られていた。
やがて峠の下を貫く形でトンネルが建設され、利便性と安全性の向上が図られたが、それでもなお、この地に漂う不穏な空気は拭い去られることはなかった。
幕の内トンネルは、広島市内でも特に有名な心霊スポットとして知られており、己斐峠と並び、恐怖の噂が後を絶たない場所である。
幕の内トンネルの心霊現象
幕の内トンネルの心霊現象は、
- 少女の霊が出没する
- 車のフロントガラスに、突然女の霊が上から張り付いてくる
- トンネル周辺が異様に冷え込むという体験談
- トンネル上の旧道は、死装束の行列が出るという目撃証言
である。以上のような出来事が積み重なり、幕の内トンネルは「霊が出る場所」として、地元住民の間で語り継がれてきたのである。
以下、これらの怪異について記述する。
幕の内トンネルの心霊的背景の中心にあるのは、昭和28年8月15日に発生したバス転落事故である。
旧幕の内峠付近、トンネルの北方400メートル地点で、70人を乗せたバスが約40メートルの崖下へ転落し、10人が即死、重軽傷者は20名以上にも及んだ。
事故の生存者によれば、カーブを曲がった直後、白装束の集団が突然視界に現れたという。
運転手はその異様な光景に驚き、ハンドル操作を誤って崖下に転落したと語っている。
地元では、事故の直前にも複数の車両転落事故が相次いでおり、土地そのものに何かが「棲んでいる」と考えられている。
また、昭和31年には暴力団抗争の末、ひとりの男が殺害され、その遺体が幕の内峠に埋められるという凄惨な事件が起きた。
犯行グループは男を監禁、暴行の末に殺害し、証拠隠滅のため全裸にしてこの地に埋めたのである。
この事件は後に「広島の暴力団史に残る最初の死体遺棄事件」とされ、地域に強烈な負の記憶を刻みつけた。
トンネル付近には地蔵菩薩が安置されており、これは事故の犠牲者たちを弔うためのものであるとされる。
しかし、この仏像ですら、時折誰かが泣いているような声が聞こえると証言する者もいる。
幕の内トンネルの心霊体験談
ある地元住民は、夏の日中に仲間とともにトンネル周辺を探検した際、空気が異様に冷えていることに気づいたという。
明らかに周囲の気温とは異なり、背筋を撫でるような冷気が通り抜けたという。
また、別の住民は車でトンネルを走行中、突然フロントガラスに女の霊が上から張り付いてきたという衝撃の体験をしている。
彼はその瞬間、恐怖のあまり友人に電話をかけ「マジやばい、マジやばい」と繰り返し叫び、半泣きで助けを求めたという。
いたずらではない。声の震えと、息づかいの異常さは、まさしく本物の恐怖に晒された者だけが持つ気配であった。
幕の内トンネルの心霊考察
幕の内トンネルにまつわる数々の心霊現象は、偶然や錯覚で片付けられるものではない。
戦後のバス転落事故という大量死、そして死装束の亡霊の目撃証言。それに加えて、暴力団による非業の死を遂げた男の遺体遺棄という陰惨な事件。
このように、「死」が幾重にも塗り重ねられた土地には、何かしらの“想念”が残っても不思議ではない。
事故、事件、目撃談、それぞれが別々の出来事ではなく、幕の内という土地に宿る「何か」が引き起こした連鎖なのではないだろうか。
たとえ現在、その地に新しいトンネルが掘られ、風景が変わっていようとも、消えることのない「記憶」がある限り、幕の内トンネルは今後も静かに、しかし確実に、人知れず誰かを見つめ続けるであろう。
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