愛媛県宇和島市住吉町の須賀川に架かる「見返橋」は、江戸時代に罪人が処刑場へと連行される際、最後に城下町を振り返った場所として名が残ったと伝えられている。今回は、見返橋(愛媛)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
見返橋(愛媛)とは?
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見返橋は、宇和島市住吉町の須賀川に架けられた小さな橋である。
現在の橋は新しく架け替えられているが、その名の由来には血なまぐさい歴史が潜んでいる。
江戸時代、この橋の先に位置する黒瀬峠(宇和島市大浦の奥)には「黒ノ瀬刑場」と呼ばれる処刑場が存在していた。
そこでは磔や獄門といった重罪人に対する極刑が執行され、多くの命が非業の最期を遂げたという。
罪人たちは刑場へと連行される途中、宇和島の城下町を最後に振り返り、無念の思いを胸に歩みを進めた。
その姿を人々は「見返る」と呼び、やがてこの橋が「見返橋」と名づけられたと伝えられている。
見返橋(愛媛)の心霊現象
見返橋の心霊現象は、
- 橋を渡っている最中に誰もいないのにうめき声が聞こえる
- 夜に落武者の霊を目撃したという証言
- 須賀川の水面に罪人の生首が浮かんでいたという怪談
- 通り抜ける際に強い視線を感じ、背後を振り返ると誰もいない
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、最も多い体験談は「声」である。橋を渡っているとき、風の音とも違う低いうめき声や、泣くような声が耳元で響くという。
振り返っても誰もおらず、ただ須賀川の水音だけが暗闇に広がる。
その声は刑場へと引かれていった罪人の怨嗟ではないかと恐れられている。
また、夜の橋で目撃される落武者の霊は、全身に矢を受け血まみれの姿で立ち尽くしていたという証言が残る。
これは黒ノ瀬刑場で処刑された者の無念が武士の姿となって現れるのではないかと噂されている。
さらに恐ろしいのは、川面に浮かぶ「首」である。薄暗い水面に突如として血の気を失った人間の顔が浮かび、やがて消えていくという。
この現象を見た者は高熱を出し、数日寝込んだと伝わる。
そして、この橋を渡る人の多くが「強烈な視線」を感じるという。
後ろを振り返ると誰もいないが、その視線は首筋に突き刺さるようであり、かつて罪人が町を振り返った「最後の眼差し」が今もそこに残されているかのようである。
見返橋(愛媛)の心霊体験談
ある地元住民の体験によれば、深夜に自転車で橋を渡っていた際、背後から「まだ行きとうない…」というかすかな声を聞いたという。
慌てて振り返ると誰もいない。急いで家に帰ったが、その夜、夢の中で縄をかけられた罪人が橋の上でこちらを睨んでいたという。
目が覚めたとき、首筋にはくっきりと赤い痣のような跡が残っていたとされる。
見返橋(愛媛)の心霊考察
見返橋にまつわる心霊現象は、黒ノ瀬刑場の歴史と切り離すことができない。
罪人が最後に振り返った無念、処刑によって生じた怨嗟は、この地に染みつき、現代に至るまで消えることなく残留していると考えられる。
うめき声や落武者の霊は、罪人たちが味わった苦痛と死の恐怖が形を持ったものだろう。
水面に浮かぶ生首は、獄門によってさらされた遺骸の記憶が再現されているのかもしれない。
そして通行人が感じる視線は、死にゆく者が最後に城下町へ向けた「見返り」の眼差しそのものなのではないか。
見返橋はただの小さな橋にすぎない。
しかし、その下を流れる須賀川と共に、罪人の怨念を映し続ける“境界”であり続けているのである。
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