大分県にある三国トンネルは、今も多くの車が行き交う現役のトンネルでありながら、数々の心霊現象が語られる異質な場所である。首のないバイクや無人の車、雨の夜に現れる着物姿の女性など、奇怪なウワサが絶えない。今回は、三国トンネル(大分)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
三国トンネル(大分)とは?
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三国トンネルは、大分県佐伯市と豊後大野市を結ぶ国道502号線上に位置するトンネルである。
名称の「三国」は、かつてこの地域が岡藩、臼杵藩、佐伯藩の三つの藩の境界であったことに由来しており、その起源は江戸時代にまで遡る。
この地には「三国峠」と呼ばれる峠があり、標高およそ600メートル。
かつては軍事的にも交通的にも要衝として機能していた場所である。
特に歴史的に重要なのが二つの戦争――1586年の豊薩戦争、そして1877年の西南戦争である。
豊薩戦争では、島津軍がこの峠を越えて北上し、大友軍と衝突するための経路として使われた。
西南戦争では、飫肥隊士がこの地に陣を敷き、官軍に討ち取られたという記録が残っている。
実際に「三国峠ニテ戦死ス」と刻まれた11名の墓が存在している。
このように、三国トンネル周辺には血塗られた戦の歴史が染み付いており、まさに“死者の記憶”が眠る地である。
三国トンネル(大分)の心霊現象
三国トンネル(大分)の心霊現象は、
- 首のないバイクが後ろから追ってくる
- 運転者のいない車が反対車線から突進してくる
- 男性の霊が現れる
- 雨の夜に着物姿の女性がトンネル中央に立っている
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、「首のないバイク」であるが、これはトンネル内でしばしば語られる最も有名な怪異の一つである。
バックミラー越しにヘッドライトの光が見え、次第に近づいてくるものの、すれ違いざまに確認すると、ライダーには首がないという。
バイクのエンジン音だけが不気味に響き、気がつけばその姿は忽然と消えているという。
次に「無人の車」。これは対向車線から、明らかに運転手の姿がない車が走ってくるというものだ。
ハイビームを浴びながらこちらに迫ってくるが、すれ違う寸前に車体ごと霧のように消えるという報告がある。
「男性の霊」については、車内に突然現れる、あるいはトンネル内の壁際に佇んでいる姿が目撃されることがある。
その顔は判別不可能なほどに黒く染まっており、何かに苦しんでいたような表情をしていたとの証言もある。
そして最も恐ろしいのが、「雨の夜の女性」である。
着物を着た女性が、まるで濡れることを意に介さないようにトンネルの中央にぽつんと立っているという。
ライトで照らしてもその顔は影に隠れ、誰も近づけない。やむを得ず車で通り過ぎると、後部座席から水音とすすり泣く声が聞こえてきたという報告もある。
三国トンネル(大分)の心霊体験談
ある男性の体験によれば、深夜の豪雨の中、トンネルに入った瞬間にフロントガラスに何かがぶつかったという。
驚いて減速すると、車の進行方向に、白い着物を着た女性が静かに立っていた。
視線を向けたその瞬間、ふいにライトが点滅し、車内のラジオが「ザーッ」とノイズを発したという。
男性は急いで通過しようとアクセルを踏んだが、なぜか速度が上がらず、重い何かを引きずっているような感覚に襲われた。
そしてトンネルを抜けた瞬間、助手席の窓に無数の手形が浮かび上がっていたとのことだ。
三国トンネル(大分)の心霊考察
三国トンネルが心霊スポットと呼ばれる最大の要因は、その背後にある三国峠の歴史であろう。
かつて多くの命が戦争で奪われ、峠には無念のまま倒れた兵士たちの怨念が残されていると考えられる。
また、心霊スポットとされる多くのトンネルが廃道や旧道であるのに対し、三国トンネルは現在も交通量が多く、日々多くの車が通行している点も特異である。
そのため、日常と非日常が交差する異質な空間としての「ズレ」が、心霊現象を引き寄せているのかもしれない。
特に、直線的でありながら長いトンネルの構造が、出口までの距離感を狂わせ、不安や恐怖を助長させるという心理的作用も無視できない。
まるで“出口の見えない世界”に引き込まれるような錯覚が、霊的現象の温床となっているのではないだろうか。
そして、夜の雨という条件下での目撃情報が多い点も見逃せない。水は霊を媒介しやすいとされ、また濡れた地面に霊の気配が残りやすいとも言われている。
雨音にかき消される声なき声、見えない足音――そうしたものが、三国トンネルを「通ってはいけない道」へと変貌させているのかもしれない。
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