英彦山は福岡県田川郡添田町と大分県中津市の県境にそびえる標高約1,200メートルの霊峰である。古代から神体山として崇められ、山伏たちが命を懸けて修行を重ねてきた聖地である一方、深夜には数多の怪異譚が地下に潜んでいるという。今回は、英彦山にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
英彦山とは?

英彦山(ひこさん)は、福岡県田川郡添田町と大分県中津市の県境に位置し、三峰からなる標高約1,200メートルの霊峰である。
古来より神体山として人々の信仰を集め、日本三大修験の山(羽黒山・大峰山・英彦山)の一つとして名を馳せてきた。
山伏による厳しい修行の場として知られ、最盛期には数千人の僧兵を擁していたとされる。
また、天狗の伝説が残る霊山としても名高い。
中心部には国の重要文化財に指定されている英彦山神宮奉幣殿が鎮座し、紅葉の名所としても知られているが、その荘厳さの裏に、数多の怪異がひそんでいる。
英彦山の開基にまつわる伝承によれば、継体天皇25年(531年)、北魏の僧・善正がこの山で修行していた際、猟師・藤原恒雄に出会い、殺生の罪を諭した。
しかし恒雄は聞き入れず、白鹿を射抜いた。
その瞬間、三羽の鷹が現れ、檜の葉に浸した水を白鹿に与えると、白鹿は息を吹き返した。
この奇跡を目の当たりにした恒雄は悔い改め、善正の弟子となり、英彦山神宮を建立したという。
まさしく神秘と神聖、そして畏怖の混ざり合う土地である。
英彦山の心霊現象
英彦山の心霊現象は、
- 白い服を着た少年の霊が山中に現れる
- 子どもの笑い声が、深夜に突如聞こえてくる
- 登山中に体調を崩し錯乱する事件が多発
- 「俺を殺してくれ」と叫ぶ少女の目撃情報
- 見えない存在に取り憑かれたかのように暴れる者が出る
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず注目すべきは、白い服をまとった少年の霊である。
深夜、英彦山の山道を車で走行していた青年が、カーブの先にある電柱と看板の傍らに、ぼんやりとした少年の姿を目撃した。
彼は思わず声を上げたが、後部座席に座っていた霊感の強い友人が「見えたか?」と静かに尋ねたという。彼も同じ姿を見ていた。
少年は白っぽい服を着ており、表情は不明。ただそこに“いた”という確かな感覚だけが、今も彼の記憶に焼き付いている。
次に語るのは、子どもの笑い声にまつわる体験である。ある深夜2時頃、6人の若者が英彦山を訪れ、休憩所で雑談をしていた。
その静寂を破るように、小さな子どものくすくすとした笑い声が響いた。
最初は空耳かと思い誰も口にしなかったが、次第にその笑い声は長く、はっきりと聞こえるようになった。
そして仲間の一人が「さっきから子どもの笑い声が聞こえんか?」と呟いた時、全員が最初から聞こえていたことを知る。
鳥肌が一斉に立ち、誰もが無言のまま山を駆け下りたという。
また、英彦山では登山者が次々と倒れるという不可解な事件も報告されている。
特に有名なのが、柳川高等学校の女子生徒26名が体調を崩して次々に倒れたというものである。
原因は明らかになっておらず、「霊に取り憑かれた」「山の神の怒りに触れた」といった噂が瞬く間に広がった。
一部の生徒によれば、その中に「俺を殺してくれ」と叫びながら錯乱する少女がいたという証言もある。
これらの出来事が重なり、英彦山は静かなる霊山から、恐れられる心霊スポットへと変貌した。
英彦山の心霊体験談
筆者の知人が体験した話を紹介する。
大学時代、英彦山の施設を合宿でよく利用していたという彼は、ある年、バイトの都合で深夜に現地へ向かうこととなった。
事前に道を確認するため、地元の友人と3人で英彦山を訪れた。
山道は深夜ということもあり、車の通行はほとんどなかった。
カーブを曲がる途中、突然、電柱と看板のそばに人影が見えた。
驚いた彼が声を上げると、後部座席の霊感の強い友人が「見えたか?」と聞いてきた。
やはり彼も、同じ場所に少年の霊を見たという。その少年は白い服をまとっていたそうだ。
英彦山では、このような体験談が後を絶たないという。
英彦山の心霊考察
英彦山は、ただの心霊スポットではない。
修験者が命を懸けて修行を重ね、信仰と伝説が交差する霊山である。
そこに蓄積された信仰心、修行の念、時に断ち切られた命……それらが渦を巻き、人ならざる存在を呼び寄せているのかもしれない。
「天狗の棲む山」としての伝説も、その存在が“異界”と接している証左である。
天狗が人を迷わせ、霊が姿を現す。
山が持つ霊力と、そこに踏み込んだ人間の恐れや不信が呼応し、心霊現象を引き起こしているとも考えられる。
英彦山の怪異は、決して偶然ではない。
むしろ、この地の歴史と信仰が作り上げた“必然”とも言えるのである。
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