福岡県福岡市南区にある老司古墳には、かつての支配者が眠る静寂の墳墓が広がっている。だが、その沈黙の裏には、今もなお人々を不安に陥れる数々の心霊現象が存在しているという。今回は、老司古墳にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
老司古墳とは?

老司古墳(ろうじこふん)は、福岡県福岡市南区老司に位置する前方後円墳であり、南区最大級の古墳である。
標高約40メートルの丘陵上に築造され、5世紀初頭頃に福岡平野の有力な首長の墓として築かれたと考えられている。
墳丘の全長は76メートル、前方部幅は30メートル、後円部径は45メートルという規模を誇る。
古墳の内部には、竪穴系横口式石室と呼ばれる初期の横穴式石室が、前方部に1基、後円部に3基存在する。
これらの石室からは、三角縁神獣鏡を含む10面の銅鏡、管玉や勾玉などの装身具、鉄製の刀剣・工具・馬具など、数多くの副葬品が出土している。
そしてその石室内には、複数の成人男女の人骨が残されていた。
墳丘は壺形・円筒・家形などの埴輪で巡らされており、考古学的にも東アジア史において極めて重要な存在とされ、2000年には国の史跡に指定された。
しかしこの古墳は現在、福岡少年院の敷地内にあり、一般人の立ち入りは固く禁じられている。
柵の向こうにある古墳は、まるで静かに眠る山のように見えるが、その奥底に潜む「何か」は、今もなお彷徨っているのかもしれない。
老司古墳の心霊現象
老司古墳の心霊現象は、
- 白い服を着た中年男性の霊がフェンスの向こうに立っていた
- その姿を見た者には「この人こそが葬られた人物だ」と直感的に思わせる不思議な感覚が走る
- 夜に近づくと空気が重くなり、視線を感じる
- フェンス越しに何者かのうめき声が聞こえることがある
である。以下、これらの怪異について記述する。
ある夜、ひとりの目撃者が古墳の近くを歩いていたときのことである。
少年院の敷地を囲むフェンスの向こう、暗がりの中に人影が浮かび上がっていた。
その人物は、白い服をまとい、年の頃は四十代ほどの男性であったという。
何も語らず、ただじっとこちらを見つめていたという。
不思議なことに、目撃者はその男を見た瞬間、「この人こそが古墳に葬られていた人物だ」と、理由もなく確信したという。
なぜそんな思いがよぎったのか、自分でも説明がつかないままだったと語っている。
また、別の日には、古墳の周辺に立ち寄った人物が、フェンス越しに誰かのうめき声のようなものを聞いたという報告がある。
まるで、地の底から染み出るような呻き――それは人の声でありながら、この世のものとは思えぬ不気味さだったという。
さらに、夜になると一帯は異様な静けさに包まれ、足を踏み入れた者たちは「見られている」「呼ばれている」といった感覚に襲われる。
風もないのに木々がざわめく中で、誰もいないはずの場所から足音が聞こえることもあるという。
老司古墳の心霊体験談
「深夜、車で通りかかったときのことです。なぜか目がフェンスの奥へと引き寄せられたんです。すると、そこに立っていたんです、白い服の男が。街灯の光にぼんやり照らされて、顔はよく見えませんでした。ただ、体が動かなくなりました。怖いというより、逃げてはいけない、見てはいけない、そんな気がしたんです。気づけば、その人影はもういませんでしたが、ずっと背中に冷たいものが張りついているような感覚が残りました。」
この体験者は、その後何日も悪夢に悩まされたという。
夢の中で、白い服の男がじっとこちらを見つめていた、と語っている。
老司古墳の心霊考察
老司古墳が持つ歴史的価値は極めて高いものであるが、それと同時に、長い時を超えて人々の無意識に語りかける何かが存在しているのかもしれない。
竪穴系横口式石室という、日本においても稀少な埋葬形式。
複数の成人男女が葬られ、多数の副葬品とともに眠るその場所は、単なる墓所以上の意味を持つのではないか。
埋葬された者たちが首長であったならば、その死にまつわる儀式や祀りの力もまた強大であったと考えられる。
白い服の男の姿は、あまりに生々しく、そして現実離れしていた。
それは霊的な残像か、あるいは古代の記憶が現代にまで滲み出たものなのか。
見た者に「この人だ」と直感させるほどの存在感は、偶然の産物とは思えない。
古墳とは、死者の眠る静寂の地である。しかし、老司古墳はただの静寂では終わらない。
そこには今もなお、語られぬ記憶と、断ち切れぬ想念が眠っている――いや、彷徨っているのかもしれない。
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