王子山城跡は、福山市の市街地に残る戦国時代の城跡でありながら、古くから不気味な噂が絶えない場所である。戦乱の歴史とともに、自ら命を絶った者や不可解な霊の話が幾重にも積み重なり、この地をただの史跡とは異なる、恐怖を誘う心霊の舞台へと変貌させているという。今回は、王子山城跡にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
王子山城跡とは?

王子山城跡は、広島県福山市の市街地のただ中に位置する戦国時代の山城跡である。
築城者は、あの毛利元就の八男・毛利元康であり、彼が天正十九(1591)年に備後神辺城主となり、深津・沼隈郡を含む広大な所領を治めた際に築いたと伝わる。
現在、国道を福山駅から東へ進むと、洋服の青山付近の左手に、コンクリートの胸壁で固められた低い丘が見える。これが王子山城跡である。
さらに市道を東へ進み「三枚橋」を渡り右折、少し進むと現れる神社の参道を上れば、そこはかつての本丸跡であり「王子神社」が建つ。
尾根には曲輪と思われる平坦地が点在し、戦国の息吹を今に伝えている。
ただ、この城跡は単なる歴史遺構にとどまらず、古くから不気味な話が絶えない場所でもある。
王子山城跡の心霊現象
王子山城跡の心霊現象は、
- 男性の霊が突如として姿を現す
- 廃れた稲荷と太い木々が並ぶ場所で、妙に空気が重く息苦しくなる
- 街中にありながら、異様な静けさと陰鬱な気配が漂い、背後に視線を感じる
- 近辺では昔から自殺が絶えず、その霊が彷徨っているのではないかと囁かれる
である。これらの現象が、王子山城跡を単なる史跡から恐怖の場所へと変貌させている。
以下、これらの怪異について記述する。
まず、この場所で多く語られるのは「男性の霊」の目撃談である。夜にふと振り返ると、城跡の石垣の陰から薄笑いを浮かべた男の影がこちらを見ていたという。
追い払うように視線を逸らして再び見れば、そこにはもう誰もいなかったが、背筋を冷たいものが這い上がってきた感覚が消えなかったと語られる。
また、王子神社の裏手には廃れた稲荷がひっそりと佇み、周囲の太い木々には縄が巻かれた痕や、切り立てのような傷跡が見つかることがある。
地元ではここが「自死を選ぶ者の集まる場所」として知られており、その木々に無念を残した者の魂が宿っているのではないかと恐れられている。
さらに、街中にあるとは思えぬほど空気が淀み、妙に音が吸い込まれていく感覚がある場所でもある。
訪れた者は決まって、後ろから誰かに見られているような錯覚に襲われるのである。
王子山城跡の心霊体験談
地元のある若者が、肝試しのつもりで王子山城跡に夜中訪れたという。
友人と二人、軽い気持ちで神社の参道を上り切ったとき、不意にどこからともなく「おい」と声がした。振り返ってもそこには木々が揺れるばかりで人の姿はない。
その後、友人が急に立ち尽くし、「肩を掴まれた」と青ざめた顔で呟いた。
二人は慌てて山を駆け下りたが、彼の肩には爪で抉られたような赤い痕がはっきりと残っていたという。
王子山城跡の心霊考察
王子山城跡は、単に戦国の歴史を伝える遺構というだけでなく、戦で斃れた兵の怨念、自ら命を絶った者たちの哀しみが複雑に絡み合い、この地を重苦しい場所へと変えてしまったのではないかと思われる。
毛利元康が築いた城が、歴史の「もし」によって繁栄の中心になっていたならば、この地に漂う不気味な気配は生まれなかったかもしれない。
だが、そこに確かにあった多くの命の終わりが、この王子山を異界との境目に変えてしまったのだろう。
それ故に、夜の王子山城跡は、決して軽い気持ちで踏み込むべき場所ではないのである。
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