小瀬川ダムには、夜の堤防に立つ女性の霊や湖面に浮かぶ影、さらには這い上がる人影など、数々の心霊現象が囁かれている。自殺や事件の舞台ともなったこの場所には、未だに消えぬ怨念が渦巻いているという。今回は、小瀬川ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
小瀬川ダムとは?

小瀬川ダム(おぜがわダム)は、広島県廿日市市と山口県岩国市に跨る、小瀬川本川上流部に築かれた重力式コンクリートダムである。
堤高は49.0m。広島県と山口県が共同で管理する国内でも稀有な形態のダムであり、小瀬川の治水、大竹市・岩国市に広がる臨海工業地帯への利水を目的として建設された。
ダムによって形成された人造湖は、小瀬川が川真珠貝の産地であったことから「真珠湖」と名付けられた。
この地は古くから水を巡る争いが絶えず、広島藩・長州藩、そして戦後も広島県・山口県の間で幾度も対立が続いた。
ダム建設を巡っては激しい反対運動や両県の利害対立が繰り返され、最終的には国の裁定により着工に至り、1964年に完成した。
静かな水面を湛えるこの湖だが、長い争いと多くの犠牲が積み重なった歴史は、単なる背景に留まらず、何か異質な空気を今もなお漂わせている。
小瀬川ダムの心霊現象
小瀬川ダムの心霊現象は、
- 夜の堤防(天端)に女性の霊が佇む
- 湖の中央付近に女性が浮かんでいるように見える
- ダム下方から人影が這い上がってくる
- 男性の霊が現れる
である。以下、これらの怪異について記述する。
小瀬川ダムは、かつての川真珠貝の生息地を沈めて築かれた。
湖面は一見、穏やかで美しい。しかし夜になると、堤防(天端)には不気味に女の霊が立っているのが目撃されるという。
堤防から身を投げる者も多く、その怨念が夜毎に形を成すのではないかと囁かれている。
また、真珠湖の中央付近には、白い影が水面に浮かぶのが見えることがある。
近付いてよく見ようとすると、ぼんやりと長い髪を持つ女性の姿が波間に揺れ、視線が合ったと錯覚した瞬間、湖面に突き落とされそうになるほどの寒気に襲われるともいう。
さらに恐ろしいのは、ダムの下方から人の影が這い上がってくる光景である。
それはずるり、ずるりと何かを引きずる音と共に近づき、地面から這い出てこちらを見上げるのだという。
20年ほど前、タクシー運転手がこの地で殺害され、車ごと湖に沈められたという噂もある。
事実であるかどうかは定かではないが、それ以来、この湖では男の霊も目撃されるようになった。
小瀬川ダムの心霊体験談
ある者は、真珠湖が心霊スポットであることを知らずに小瀬川ダムを訪れた。
灼けつくような夏の日であったにもかかわらず、堤防の上に立った瞬間、急に背筋を氷で撫でられたような冷気が走った。
やがて湖面には風が起こり、静かな水面がざわめき立ち、こちらへ迫ってくるように見えた。
吸い寄せられるように堤防の欄干から身を乗り出して下を覗くと、白いゴミのようなものが波に揺られながらこちらへ押し寄せてきた。
何気なくそれをカメラに収め、帰宅後に画面を拡大して確認すると、驚愕した。
白い泡のように見えていたものは、よく見ると無数の骸が重なり合っているように映っており、その中心から少し右に、女が笑いながらこちらを見つめているようにさえ見えたのである。
小瀬川ダムの心霊考察
小瀬川ダムは、かつて両藩、両県が争った血脈の地であり、反対運動や補償問題で住民の怨嗟が幾重にも積み重なった場所である。
そして多くの自殺者、未解決とも囁かれる事件が、この湖に深い闇を落としている。
女の霊が堤防に立ち、湖面に浮かぶのは、繰り返された悲劇の顕現なのかもしれない。
下から這い上がってくる人影は、この湖に沈んだ者たちの叫びであろうか。
静寂を装う真珠湖の水面は、訪れる者に向かってひそやかに囁く。
「ここから逃れることはできない」と。
小瀬川ダムは、そんな底知れぬ闇をいまだに抱え続けている場所なのかもしれない。
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