沖縄のある家庭には、美しい三線の音が響く夜がある。
夕暮れが深まり、星が空に瞬くとともに、家族は穏やかな眠りにつく準備をしていた。
そんなある夜、突然、どこからともなく三線の音が聞こえてきた。
最初はほんのりとした音色で、家族は気にも留めなかった。
しかし、音は徐々に大きくなり、夜が深まるにつれて、家中に鳴り響くようになった。
母の優子は、その音に目を覚ました。
最初は寝ぼけた耳で「夢だろう」と思ったが、音があまりにも現実的であったため、目をこすりながら起き上がった。
音の発生源を探すために家の中を歩き回るが、どこにも三線は見当たらない。
家族は音の発生源が見つからないまま、一晩中耳を澄ませていた。
次の日、家族の長男、太郎が突如として高熱を出し、病院に運ばれたが、原因不明のまま亡くなってしまった。
優子は驚きと悲しみで打ちひしがれながらも、家の中で何かがおかしいと感じた。
夜になると、再び三線の音が聞こえてきた。
音は家の中にますます大きくなり、次第に家族の安眠を脅かすものとなった。
音の影響か、次々と奇妙な事故や病気が家族を襲った。
娘の花子が台所で料理中に包丁で手を切り、重傷を負ったり、夫の健二が突然の事故で重傷を負ったりする。
家族は、三線の音がもたらす不幸を解明しようとするが、どうしてもその原因を突き止めることができないまま、恐怖におびえるだけだった。
ある晩、優子はついに三線の音の発生源を見つけることができるかもしれないと、音の響く方向を辿りながら家の隅々を調べ始めた。
家の裏手にある古びた納屋にたどり着いた優子は、そこに古い三線が置かれているのを見つけた。
三線は埃をかぶり、長い間使われていなかったようだったが、その音色は依然としてはっきりと響き渡っていた。
優子が三線に触れると、突然音が消えた。
その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜け、納屋の隅で青白い影が現れた。
優子はその影に見覚えがあるような気がして、息を呑んだ。
影はかつて家族の一員だった故人であり、その怨念が三線の音となって家族を襲っていたのだった。
その夜を境に、家の中は静寂に包まれた。
三線の音は二度と聞こえることはなく、家族は次第にその恐怖から解放された。
しかし、何も語らず静かに去った影の存在が、彼らの心の中に深い傷を残したのである。
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