松山市郊外に位置する星岡古戦場跡は、かつて激しい戦いが繰り広げられた場所である。その血と怨念が染みついた地には、今もなお不気味な噂が絶えない。今回は、東弾寺にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
東弾寺とは?

東弾寺(とうだんじ)は、今治市の「ケヤキ並木みち」の先にひっそりと存在する古刹である。
かつて「東禅寺」とも呼ばれ、創建は古代にまでさかのぼる。伝承によれば、その起源は「鉄人伝説」と呼ばれる戦乱の歴史に結びついている。
朝鮮大陸に「鉄人」と名乗る恐ろしく強大な武将が現れたとき、朝廷は古代伊予の豪族・越智益躬に討伐を命じた。
死闘の末、益躬は鉄人を討ち果たすことに成功するが、その戦で多くの兵士が命を落としたという。
益躬は彼らの霊を慰めるため、一寺を建立した。それが東弾寺のはじまりである。
今もなお、寺の周囲は昼間でさえ薄暗い雰囲気を漂わせ、夜になると足を踏み入れるのをためらわせる不気味さを放っている。
東弾寺の心霊現象
東弾寺の心霊現象は、
- 東弾寺の入口に現れる黒髪の長い女の霊
- その女を見た者が三日間金縛りに苦しむ怪異
- 四日目に事故や不幸に見舞われるという呪い
である。以下、これらの怪異について記述する。
入口に現れるという黒髪の女は、夜ごとに人を待ち構えるかのように立っていると伝えられている。
その姿を見てしまった者は、必ず三日間続けて金縛りに苦しめられるという。
その金縛りは通常のものとは違い、耳元で誰かが呼吸する音や、背後に誰かが腰かけているような重みを伴うとされる。
さらに恐ろしいのは、その怪異が四日目に頂点を迎えることである。
実際に、女性の霊を目撃した直後に交通事故で命を落とした者や、突然の不審死を遂げた者がいたという噂が残っている。
まるで見た者の命を奪う呪いのように、不可解な死が後を絶たないのである。
また、境内に入った際に「カチ…カチ…」と数珠を擦る音や、低く響く読経が聞こえたという報告もある。
だが実際には誰もおらず、音の正体は不明である。兵士の魂が今も成仏できずに残っているのか、それとも黒髪の女が人を誘うために響かせているのかは定かではない。
東弾寺の心霊体験談
ある今治市の男性は、夜中に好奇心で東弾寺を訪れた。懐中電灯の光を頼りに山門へ近づいたとき、闇の中から女の長い髪がふわりと揺れるのを見た。
恐怖で立ち尽くした彼は、その夜から三日間、寝床で必ず金縛りに遭い、息苦しさと共に耳元で「見たな」という声を聞いたという。
四日目の朝、彼は車で外出した際に交差点で事故を起こし、九死に一生を得た。以後、彼は二度と東弾寺に近づこうとはしなかったと語っている。
東弾寺の心霊考察
東弾寺に現れる黒髪の女は、鉄人との戦いで命を落とした兵士の怨念が形を変えたものか、あるいは戦乱に巻き込まれ無念の死を遂げた女性の魂である可能性が高い。
戦場で失われた命は数知れず、その怨嗟の念が土地に積み重なり、東弾寺という場に封じ込められているのだろう。
金縛りの怪異や事故死に至る呪いめいた現象は、霊的存在が「見た者を逃がさぬ」という強烈な意志を持つ証左といえる。
さらに読経や数珠の音は、無数の亡者が今なお供養を求めてさまよっている証ではないか。
東弾寺は歴史の記憶と怨念が重なり合う場所であり、決して軽い気持ちで訪れてはならない場所なのかもしれない。
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