広島県廿日市市にひっそりと残る包ヶ浦隧道は、古戦場として血に染まった過去や、近年の自殺者の影が重なり合う場所であるという。今回は、包ヶ浦隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
包ヶ浦隧道とは?

包ヶ浦隧道(つつみがうらずいどう)は、広島県廿日市市の主要地方道厳島港厳島公園線に位置し、1954年(昭和29年)に竣工した長さ58.7メートル、幅3.3メートルほどの小さな隧道である。
もともと車道として利用されていたが、1989年(平成元年)10月に隣に新しく杉ノ浦隧道が完成したため、現在は車止めが設置され、自転車や歩行者専用となっている。
しかし、実際にはそこを歩く人影はほとんど見られず、なぜか一本だけ点灯する照明がこのトンネルの不気味さをさらに際立たせている。
周辺は古くから「鼓ヶ浦(つづみがうら)」とも呼ばれ、厳島合戦の折に風雨を突いて毛利軍が上陸した場所とも伝わる。
宮島は戦前、軍事的要所として瀬戸内海沿いに多くの砲台が築かれ、一時期は地図からその姿を消されていた歴史を持つ。
包ヶ浦キャンプ場から市道を進み、山沿いを歩いていくと砲台跡や工兵部隊の宿舎跡が残っており、夜に訪れるとただならぬ恐怖が襲いかかってくるという話もある。
包ヶ浦隧道の心霊現象
包ヶ浦隧道の心霊現象は、
- 女性の霊が現れる
- うめき声や赤子の泣き声が聞こえる
- 武士の霊が出没する
- 顔が崩れた女性の姿を目撃する
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、この場所では白いTシャツにジーパン姿という、一見何の変哲もない服装をした女性の霊が目撃されている。
だが、よく見るとその顔は半分が爛れたように崩れ落ちており、暗いトンネルの奥でこちらをじっと見つめてくるのだという。
また、夜中にトンネル内を歩くと、どこからともなく女性のうめき声や、赤ん坊のか細い泣き声が響くという証言も多い。
振り返っても誰もいない。声はトンネルの奥から滲み出るように響き、やがて闇に溶けて消えていく。
この地がかつての合戦の舞台であったためか、古びた甲冑をまとった武士の霊が、暗い中から無言で現れるという話もある。
近年は自殺者も多く、そうした無念が積み重なり、この世に彷徨い続ける亡霊となったのかもしれない。
包ヶ浦隧道の心霊体験談
ある夜、一人でトンネルを抜けようとした男性は、ふと背後から足音が追いかけてくるのを感じたという。
慌てて振り返ると誰もいない。
安堵して再び歩き出した瞬間、右肩を冷たい手に掴まれた。驚いて再び振り向くと、そこには顔が半分溶けた女性が立っており、静かに、しかし確実にこちらを見つめていたという。
また別の者は、夜の包ヶ浦隧道を抜けた直後、遠くで赤ん坊の泣き声がはっきりと聞こえた。
それは紛れもなく人間の声だったが、あたりには誰もおらず、山に響くその声だけがいつまでも耳に残ったという。
包ヶ浦隧道の心霊考察
包ヶ浦隧道周辺は、古戦場の血塗られた歴史と軍事遺構の陰鬱な記憶が混ざり合う場所である。
さらに近年の自殺者の霊も加わり、幾重もの怨嗟と未練がこの小さな隧道に集まっているのだろう。
人の気配がほとんどないこの道を、夜に照らす一本の照明。
その下に佇むのは、生者か、それともこの世に未練を残した亡者か。包ヶ浦隧道は、今も静かに訪れる者を待ち構えているのかもしれない。
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