かつて国道として使われ、今は廃隧道として山中に取り残された「畑野浦隧道」。男性の霊の目撃や不可解な足音、写真に浮かぶ顔など、数々の怪異が囁かれる。今回は、畑野浦隧道にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
畑野浦隧道とは?

畑野浦隧道(はたのうらずいどう)は、大分県佐伯市の山中にひっそりと佇む、かつての国道388号旧道にあたる廃トンネルである。
現在では「佐伯市道」となっているが、実質的には通行不能な状態にある。
トンネルは元々、大正11年(1922年)に人道用として開通し、その後、戦後の1958年に自動車通行が可能となるよう拡張された。
しかし、1977年に新たな「畑野浦トンネル」が竣工したことで、現役を退いた。
このトンネルに至る旧道は、今もなお林道として細く険しいダート道となって残っており、「落ちたら命はない」とまで言われる危険な峠道である。
現地に残るのは、風雨にさらされ苔むした古びたトンネル。
人影もなく、鳥の声すら聞こえないその静寂は、まるで時が止まったかのような異様な空間である。
畑野浦隧道の心霊現象
畑野浦隧道で噂されている心霊現象は、
- 男性の霊が現れる
- 写真に顔のようなものが写り込む
- トンネル内部で足音が聞こえる
- 夜中に通ると車が急に止まる
である。以下、これらの怪異について記述する。
かつて命懸けで峠を越えた旧道の途中に位置する畑野浦隧道は、昼間でもほとんど日が差し込まない。
入口は不自然に暗く、まるで吸い込まれるような闇が口を開けて待ち構えている。
この隧道で最も有名なのは「男性の霊」である。
ある者は、隧道の中央でボンヤリと立ち尽くす男の姿を見たという。
その男はうつむいており、近づくとスッと消えてしまったらしい。
身元や由来は不明であるが、その姿は何十年も変わらず語り継がれている。
また、隧道の入口で写真を撮ると、時折「人の顔のようなもの」が写るという報告もある。
特に、誰もいないはずの場所に浮かぶ半透明の顔は、見た者を恐怖の底へと突き落とす。
深夜にトンネルへ向かうと、不意に車のエンジンが止まり、ヘッドライトが消える現象が報告されている。
点検しても故障の痕跡は見つからず、車が再び動き出すのは、必ず「隧道から離れた場所」であるという。
そして最も奇妙なのは、トンネル内で「パチ…パチ…」と足音が響くことである。
だがその音は、振り返っても誰もいない背後から聞こえてくるのだ。
畑野浦隧道の心霊体験談
ある男性が真夜中に林道を車で登り、畑野浦隧道を訪れたときのこと。
トンネルの手前で車を停め、懐中電灯を片手に徒歩で中へ入った。
途中で「パリッ…パリッ…」という足音が響き出した。
不審に思い引き返そうとした瞬間、背後から低いうめき声が聞こえたという。
急いで車に戻る途中、再び声が聞こえ、振り返ると、トンネルの奥に立ち尽くす人影を見たという。
車に飛び乗り逃げ出そうとしたが、エンジンがかからず、何度もキーを回すうちに、突然人影がフロントガラスのすぐ先まで近づいた。
その後、気を失ってしまい、目を覚ましたのは朝になってからだったという。
畑野浦隧道の心霊考察
畑野浦隧道で目撃される霊の正体は、今も不明である。
事故や事件の記録が乏しく、はっきりとした背景は存在しない。
しかし、この隧道に至る峠道は極めて危険で、過去に多くの車両事故や転落死があったであろうことは想像に難くない。
人々が命を落としたその地に、何かが残っていても不思議ではない。
たとえ霊ではなくとも、この地には“何か”が潜んでいる。
人の気配が一切しない山中で、たったひとり立ち尽くす恐怖。
その空気そのものが、異界との境界を曖昧にしているのかもしれない。
畑野浦隧道は、ただの廃トンネルではない。
過去と現在の狭間に、確かに「何か」が息づいている——そんな気配を、訪れた者は感じずにはいられないのである。
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