福岡県と大分県の県境に位置する夜明ダム。発電を目的に築かれたこの静かなダム湖は、実は古くから数多の怪異が囁かれてきた心霊スポットとしても知られている。今回は、夜明ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
夜明ダムとは?

夜明ダムは、福岡県うきは市と大分県日田市の境にまたがる筑後川本川に建設された、九州電力の発電専用ダムである。
1952年(昭和27年)に着工し、1954年(昭和29年)に竣工されたこのダムは、高さ15メートルの重力式コンクリートダムで、筑後川中流域の電力供給の一翼を担ってきた。
ダムの名が示す「夜明(よあけ)」は、もともと「夜焼(よやけ)」と呼ばれていた焼畑農業に由来する地名である。
縁起の悪さを避け「夜開(よあけ)」と書かれるようになり、最終的に「夜明」と転じたという。
この地は、古くから災害に見舞われており、特に1953年(昭和28年)の西日本水害では、建設中だったダムが決壊寸前となり、下流に大きな被害を与えた。
この事故を含め、夜明ダム周辺では不幸な出来事が相次いでおり、それが後述する心霊現象と深く結びついているとも囁かれている。
夜明ダムの心霊現象
夜明ダムの心霊現象は、
- びしょ濡れの女性の霊が出る
- 夜中に人影が堤体に立っている
- 誰もいないはずの場所から声が聞こえる
- ダム近くの旧トンネルで叫び声や人影が目撃される
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず、最も有名な話として、ダム湖畔に現れる「びしょ濡れの女」の霊が挙げられる。
深夜、人気のないダムのそばで、一人じっと立ち尽くすその姿は、髪を垂らし、全身から水を滴らせており、目が合うと忽然と消えるという。
次に語られるのが、人影の目撃談である。
特に堤体のてっぺんに、誰もいないはずの深夜に人の姿が立っていたという報告が後を絶たない。
ライトを向けるとその影は掻き消え、まるで水のように霧散するという。
また、誰もいないはずの場所から話し声やうめき声が聞こえてくるという現象も頻発している。
特に風もなく静まり返った夜に限って、その声ははっきりと耳に届くらしい。
さらに恐ろしいのが、現在は閉鎖された旧トンネルでの体験談である。
このトンネルは建設中に作業員が崩落事故で生き埋めになったという噂があり、その後、誰もいないはずのトンネル内で叫び声や、作業員らしき人影が確認されたとの証言が複数存在する。
夜明ダムの心霊体験談
ある若者グループが心霊スポット巡りの一環として夜明ダムを訪れた際のことである。
深夜2時、ダム湖を眺めていると、水面に何かが浮かんでいるのが見えた。
懐中電灯で照らすと、それは確かに人の顔だったという。だがその瞬間、顔が目を見開き、彼らを睨み返してきた。
恐怖のあまり車に逃げ帰ろうとしたが、誰もいないはずの後部座席から「連れてって……」と女の声が響いたという。
夜明ダムの心霊考察
夜明ダムには、少なくとも20体以上の遺体が発見されたという記録がある。
遊泳中の事故、車の転落、自殺……。この場所には、数多くの命が消えた過去が刻まれている。
静かな水面の奥底には、未だ浮かび上がれない“何か”が沈んでいるのかもしれない。
加えて、旧トンネルでの作業員の事故死が本当にあったとすれば、その無念の声がいまだ消えずに残っているとも考えられる。
霊が現れるのは偶然ではなく、この地に刻まれた痛みと怨念が、形を変えて現れているのではないだろうか。
夜明――。
その名の通り「夜が明ける場所」であるはずの地に、今なお“夜”が巣くっているとしたら、それは過去に葬られた悲劇が、決して終わっていない証なのかもしれない。
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