徳島県吉野川市にかつて存在した「天野病院」は、長年放置された廃墟の中でも、特に恐れられていた場所である。今回は、天野病院にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
天野病院とは?

天野病院とは、徳島県吉野川市川島町に存在していた廃病院である。
地元では「天〇病院」とも呼ばれ、また「幽霊屋敷」の名でも知られていた。
かつては結核や頼病といった感染症患者を隔離・治療するための施設だったとされ、病棟の窓には×印の鉄格子が取り付けられていたという噂もある。
病院本館は1980年前後に解体され、さらに2003年には宿直用の離れも撤去された。
すでに建物自体は現存していないが、長らく放置されていたこともあり、その異様な雰囲気から「徳島三大病院廃墟」の一つとして語り継がれてきた。
天野病院の心霊現象
天野病院の心霊現象は、
- 髪の長い看護婦の霊が出現する
- 院内のカルテを持ち帰ると霊から電話がかかってくる
- 赤子のような鳴き声が聞こえる
- キューピー人形を踏むと祟りが起こる
- 錆びた医療器具やホルマリン漬けがそのまま残されていた
である。以下、これらの怪異について記述する。
最も知られているのは「髪の長い看護婦の霊」である。
白衣を纏い、無表情のまま病院内の廊下を歩く姿が目撃されていた。
ときには、その看護婦が窓の外から覗き込んでいるという証言もある。
さらに、この病院には奇妙な噂があった。
廃墟となった後も、院内に散乱していた患者のカルテを不用意に持ち帰ると、数日後に自宅の電話が鳴り、無言のまま女の声が聞こえてくるというのだ。
声は怒っているようで、電話の向こうからは、まるで誰かが泣いているようなすすり泣きも混じっていたという。
また、建物の前にはなぜかキューピー人形が落ちており、それを踏むと「命を落とす」という凶悪な都市伝説も存在していた。
実際に踏んだ者が不運に見舞われ、骨折したという体験談もあり、その信憑性を裏付けるものとされた。
病院内部には錆びたメスや血のついた医療服、そして赤ん坊のホルマリン漬けまで放置されていたという証言がある。
人体への執着が残るかのような遺物の数々は、まるで病院自体が死者の魂を閉じ込めていたかのような印象を与えていた。
天野病院の心霊体験談
10年以上前、肝試しとして訪れた際のことである。病院に近づくにつれ、肌を突き刺すような寒気が全身を這いまわり、突然、赤ん坊の泣き声が耳元で響いた。その声ははっきりと聞こえ、仲間全員が動けなくなった。我々はそれ以上進むことを断念した。
― 天野病院訪問者の証言
実際に病院の前でキューピー人形を見つけた者がいた。その人形を踏みつけた数日後、彼は転倒して右足を骨折した。偶然とは思えなかった。地元では「踏んだら死ぬ」と言われており、その呪いの一端を垣間見た気がした。
― 体験談投稿より
天野病院の心霊考察
天野病院に現れる霊が、患者ではなく「看護婦」であるという点は非常に興味深い。
医療に携わる者が、命を救う場である病院に取り残されてしまったのは、何かよほど強い未練、あるいは怒りがあったのではないだろうか。
カルテを持ち出すと電話がかかってくるという話は、病院の情報や記録が「侵してはならない領域」であるという霊的メッセージとも受け取れる。
残されたカルテや遺品は、看護婦の霊にとって神聖なものであり、触れることでその怒りを買ってしまうのかもしれない。
また、キューピー人形という無垢の象徴が祟りを引き起こすという点も不気味である。
病院の前に置かれていた理由は不明だが、赤ん坊の霊が宿っているのではないかという憶測もある。実際、赤ん坊の鳴き声を聞いた体験談が複数報告されている。
現在、建物はすでに解体されているが、その跡地に宿る怨念は消えたとは言い切れない。
病院の離れにあたる宿直施設もかつては残されており、取り壊しの際に何らかの霊障が起きたという噂もある。
「見えないものに触れようとするな」。天野病院の数々の現象は、そう我々に警告しているのかもしれない。
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