福岡県にある江川ダムには、数々の不可解な出来事と恐ろしい目撃談が存在するという。今回は、江川ダムにまつわるウワサの心霊話を紹介する。
江川ダムとは?

江川ダム(えがわダム)は、福岡県朝倉市を流れる小石原川(こいしわらがわ)に建設された重力式コンクリートダムである。
竣工は1972年。ダムの高さは79.2メートルにおよび、両筑平野の水道用水や農業用水を支える重要なインフラとして、独立行政法人水資源機構が管理している。
また、ダムによって形成された人造湖は「上秋月湖(かみあきづきこ)」と呼ばれ、2005年には「ダム湖百選」にも選定されている。
だが、その静寂な水面の裏には、数々の凄惨な過去が潜んでいる。
江川ダムの心霊現象
江川ダムで語られる心霊現象は、
- 男性の霊の目撃
- 練炭自殺があった林道での異音
- 火の玉の群れの出現
- 入水自殺者の霊がさまようという噂
である。以下、これらの怪異について記述する。
まず最も多く語られているのが「男性の霊」の目撃談である。
静まり返ったダム周辺で、山道を運転中に車の前をフラリと横切る人影。
しかし、降りて確認してもそこには誰もいない。まるで水に誘われるように現れるという、その霊の正体は、自ら命を絶った者の残留思念であろうか。
次に、林道を通ってダムに向かう際、ガードレールを「カン、カン」と金属で叩くような異音が聞こえてくる現象である。
この音は、2003年に起きた男性二人の練炭自殺事件が関連しているのではと囁かれている。
二人が命を絶った場所は、まさにその林道上であった。
さらに異様なのが、「火の玉の群れ」の目撃情報である。
夜の静寂に包まれたダムの水面に、20~30個ほどの光る球体が現れ、ふわりふわりと空を漂っていたという証言が複数存在する。
直径は20~30センチほど、虹色に揺らめくその姿は、まるでこの世のものではなかったとされる。
また、ダムは古くから入水自殺が多い場所として知られており、そのために「浮かばれぬ霊が水面をさまよう」といった噂も根強い。
深く冷たい水の底には、誰にも見つけられず、誰にも祈られることなく沈んだ命があるのだ。
江川ダムの心霊体験談
静寂を裂く光──江川ダム、夜の火の玉
ある人物が体験した話である。
それは、今から数年前、江川ダムの休憩所――自販機が設置された、あの静かな場所で起きたという。
夜の10時頃、ドライブの途中で女友達と立ち寄り、ジュースを手に湖面を眺めていた。
空気は湿って冷たく、周囲には自分たち以外に誰もいなかった。エンジンの音も切り、あたりに響くのは風の音と、かすかな虫の声だけ。
だが、その静けさは突如として破られる。
何の前触れもなく、湖面の奥から、ふわり、ふわりと光が浮かび上がってきたのだ。
ひとつ、またひとつ……瞬く間に数が増え、気づけば二十、三十にもなる火の玉が、まるで水から這い出るように姿を現した。
それらは虹色に輝きながら、音もなく、一定の速度で目の前を横切り、やがてダムの奥の闇へと吸い込まれるように消えていったという。
火の玉の大きさは直径20~30センチほど。ひとつひとつが不規則に揺れながら、まるで何かを探すように漂っていた。
その様子は“美しい”というよりも、“異様”であり、“この世のものではない”としか思えなかった。
体験者は霊感などまったくない、ごく普通の人物である。それでもそのときばかりは、喉が張りついて声も出ず、体が金縛りに遭ったかのように動かなかったという。
そしてその光景は今もなお、眠るたびにまぶたの裏に浮かび、離れることがないという。
まるで、何かがまだそこに“いる”とでも言うように――。
湖底に揺れる灯──江川に現れる“火の玉”の記憶
私は現在71歳になるが、幼い頃をこの江川の地で過ごした。今は湖底に沈んでしまったその村で、中学生になるまでの記憶が鮮明に残っている。
あの頃、夜になると時折、火の玉が現れた。
特に雨上がりや曇天の薄暗い日の午後7時から8時頃、まだ完全に闇が落ちきらない山肌に沿って、ふわり、ふわりと漂うように炎の玉がゆらめいていたのを何度も目にしている。
その光はぼんやりとしていながらも不気味に明るく、音もなく、まるで何かを探してさまよっているかのようだった。
当時はまだほとんどが土葬であった。棺に入れたまま土に埋められた遺体が、朽ちていく中で化学反応を起こし、リンが発生するのだと大人たちは言っていた。
しかし子どもながらに、それが“ただの自然現象”だとは到底思えなかった。
なぜなら、その火の玉たちは、まるで意志を持っているように、静かに、そして確かに、誰かの眠る場所の上を漂っていたからである。
あの光景は、歳を重ねた今でも夜になるとふと脳裏に浮かび、眠れぬ夜を迎えることがある。
あれは本当に“リン”だったのだろうか。
それとも、静かにこの地に取り残された、名もなき魂の断末魔だったのか――。
江川ダムの心霊考察
江川ダムが心霊スポットとして知られるようになった背景には、やはり多数の自殺者の存在が大きく影響している。
水をためるダムという構造上、流された遺体が底にとどまりやすく、魂が彷徨い続けるのではないかという仮説もある。
上流に新たなダムが建設されると、目撃談が激減するという話もあるが、それが本当に霊の移動と関係しているのかは定かではない。
また、江川ダムで目撃される火の玉や霊の姿は、ただの噂で片づけるにはあまりに多くの証言がある。
霊現象に懐疑的な者でさえも、現地の雰囲気や証言に触れると、その異様さに息を呑むことがあるという。
江川ダムは、見た目には整備された観光地のように映るが、その裏側には、静かに語られぬ恐怖が今も潜んでいるのである。
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