徳島県三好市と香川県三豊市を結ぶ旧国道沿いに位置する「猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)」は、かつて四国最大級と称された長大トンネルである。その役割を終えた今、昼でも薄暗く静まり返ったその内部では、不可解な現象や目撃談が相次いでおり、地元では心霊スポットとして知られている。今回は、猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)とは?
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猪之鼻隧道は、徳島県三好市池田町と香川県三豊市財田町を結ぶ旧国道32号線、通称・猪ノ鼻峠に位置するトンネルである。
竣工は昭和39(1964)年。延長827メートルという当時としては四国最大級の長大トンネルであり、県境の難所を貫通する重要な交通路として長く利用されてきた。
この道は元々、明治27(1894)年に開通した「四国新道」を基にしたもので、昭和37年から42年にかけて改良が施された。
しかし、道全体に急勾配と急カーブが多く、特に高松側の2つのヘアピンカーブは事故多発地帯として知られ、制限速度はわずか30km/hに設定されている。
令和2(2020)年、新たに「猪ノ鼻道路」が開通したことで通行量は激減し、猪之鼻隧道は「旧道」として徐々に静寂と暗闇に包まれるようになった。
現在は主に歩行者や自転車が利用するものの、その不気味な佇まいは、かつての交通の要所であったことを忘れさせるほどである。
猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)の心霊現象
猪之鼻隧道の心霊現象は、
- トンネルに入ると、後部座席に女の霊が現れる
- 誰もいないはずのトンネル内で「カツ…カツ…」とヒールの音が響く
- トンネルを抜けた直後、運転中の車が突然、霊に引かれるようにブレーキが利かなくなる
- トンネルの壁面に、血のような染みが浮かび上がる
である。以下、これらの怪異について記述する。
かつて交通の難所とされ、多くの事故を生んだこの道は、今では人影のない時間帯に立ち入ることすら躊躇われるほどの異様な雰囲気を放っている。
最も知られる現象は、「後部座席の女」である。夜間に車でトンネルへ入ると、バックミラー越しに見知らぬ女性の姿が映るという。
助手席ではない。
必ず、後部座席——しかも運転者の斜め後ろに現れる。気配だけを感じることもあれば、顔がはっきり見えることもあるという。
また、深夜には誰もいないはずのトンネル内から「カツ…カツ…」というヒールの音が反響するという証言もある。
音は近づいてきて、車をすれ違うように通り過ぎるが、何も見えない。まるでかつてそこを歩いていた誰かの残留思念のようだ。
さらに恐ろしいのは、トンネルを抜けた直後に起こる不可解な現象である。
運転中の車が突然、ブレーキが利かなくなり、峠道をそのまま突っ込んでいくような感覚に襲われる。
実際に事故に至った例もあるとされ、「何かに引かれるようだった」と語る生還者も存在する。
最後に、通行者がたびたび目撃するという「血の染み」について触れておく。トンネル内部の壁面に、赤黒い液体のようなものが浮かび上がるという現象だ。
拭っても消えず、翌日には形を変えて再び現れるという。
猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)の心霊体験談
ある若者二人が、興味本位で猪之鼻隧道を深夜に訪れたという。
車でトンネルに進入し、中ほどまで来たところで、助手席の男が「今、女の声がした」と呟いた。
運転していた者はそのとき、ルームミラーに何かが映った気がしたが、「気のせいだ」と言い聞かせ、加速してトンネルを抜けようとした。
ところが、トンネル出口目前で急にハンドルが重くなり、車体がふらつき始めたという。
ブレーキも利かず、峠の下り坂をしばらく制御不能のまま滑走。幸い事故には至らなかったが、ふたりは震える手で車を降り、その夜はそのまま香川の友人宅に避難したという。
その数日後、助手席の男が自宅の風呂場で、「トンネルで見た女の顔が浮かんで消えない」と呟きながら、泡を吹いて倒れた。
幸い一命は取りとめたが、今でも夜道に近づくことができないという。
猪之鼻隧道(猪ノ鼻トンネル)の心霊考察
このトンネルにまつわる霊の正体は、旧猪ノ鼻峠の多発事故に由来するものと考えられている。
かつての峠道は急勾配と急カーブが連続し、特に冬場には転落事故が相次いだ。
特に多かったのは、生活のために軽トラックで峠を越えようとした若い女性の事故死だったとも言われている。
後部座席に現れる霊は、家族の元に帰ろうとしていた途中で命を落とした女性の“願い”の残滓なのかもしれない。
歩き続ける足音は、峠道を徒歩で越えていた過去の姿の残像なのか——。
また、現代の利用者が少なくなった今も、あえて旧道を選び「その場所」を訪れる者が後を絶たないことが、霊的エネルギーを刺激している可能性もある。
通行量が減ったことによって静寂が増し、潜んでいた“何か”が浮き上がってきたのではないか。
かつて四国最大級とまで言われた交通インフラが、今では霊が棲みつく忌避の場と化している。
文明の光が届かなくなったその奥に、何が待ち受けているのか——猪之鼻隧道の噂は、今なお終わることがない。
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