長崎県五島市にある「曲坂(まがりざか)」には、古くから不気味な噂が絶えない。かつて火葬場や野焼き場があったその場所では、白い服を着た女性の霊が目撃されるなどの心霊現象が語り継がれている。今回は、曲坂にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
曲坂とは?

曲坂(まがりざか)は、長崎県五島市松山町に存在する坂道である。
現在は道路も整備され、奥浦方面へと続く道として日常に溶け込んでいるが、かつての姿はまるで異なっていた。
およそ50年前、曲坂は道幅も狭く、峠を越えると左へ鋭角に曲がる急カーブが待ち構えていた。
その地点には、福江市営火葬場が存在し、付近には古びた墓地も点在していたという。
また昭和40年代中頃には急増するゴミに対応しきれず、曲坂の谷間で“野焼き”が行われることもあった。
立ち上る煙は火葬とゴミ焼却のものであり、その一帯は、常に何かが燻り、何かが燃え、何かが残されているような異様な空気を纏っていたという。
曲坂の心霊現象
曲坂の心霊現象は、
- 白い服を着た女性の霊が現れる
- 野犬に襲われる不可解な体験が起こる
- 見える人には、車の中からでも幽霊が見える
- かつての火葬場跡地にまつわる噂話が根強く残る
である。以下、これらの怪異について記述する。
白い服を着た女性の霊が現れる
この坂道で最も語られる心霊現象が、白い服を着た“女性の影”である。
夜になると、坂の下りでその姿を目撃したという証言が複数存在する。
まるで待ち構えていたかのように、音もなく現れるその影は、見る者の足を止め、心拍を奪い、後にはただ逃げ出すしかない恐怖を残す。
野犬に追われる不可解な体験
ある人物は、夜遅くに飲み会の帰り、自転車でこの坂に差しかかると、数匹の野犬に執拗に追われたという。
そして、ようやく追い払ったかと思えば、坂を下るその瞬間、目の前に“白い女性の影”が立ちはだかった。
彼は死にもの狂いでペダルを踏み、自転車を飛ばして逃げ帰ったという。
車でも見える霊
自転車のような人力の移動手段では霊から逃れることは難しいとされているが、車であっても“見える人”には見えてしまうようである。
たとえガラス越しであっても、その存在は視界に入り込んでくるのだ。
火葬場跡地にまつわる噂
昭和の時代、曲坂には市営火葬場が実在していた。
その跡地で目撃される霊が、白い服の女性と同一の存在なのか、それとも複数存在するのかは定かではないが、かつての火葬場という土地の記憶が、霊的な現象の発生と深く関係している可能性は否定できない。
曲坂の心霊体験談
実際に曲坂で体験をした人物によれば、夜、自転車で坂に差しかかったところ、突如として野犬が現れ、追い回されたという。
命からがら野犬を振り切った直後、坂を下り始めたその目の前に、“白い女性”が現れた。
生きた心地がせず、全身を恐怖が駆け抜ける中で、とにかく必死に逃げ帰ったという。
後日、この体験を周囲に語ったところ、「見たことがある」という人々が思いのほか多く存在することに気づき、戦慄を覚えたという。
そこには偶然とは思えない“共通の恐怖”が潜んでいた。
曲坂の心霊考察
曲坂は、その名の通り不自然に曲がった地形に加え、かつて火葬場が存在していたという歴史を持つ。
地霊と人間の営みが交錯するその場所において、いわゆる“霊的現象”が発生する条件は揃っているといえる。
火葬場や墓地は古来より霊の集まりやすい場所とされている。
さらに、野焼きによる多量の煙が立ち込めていたという過去は、土地に“死”と“穢れ”の記憶を濃く刻み込んでいる可能性がある。
白い服の女性が誰であるかは不明だが、その存在は“ただの残像”ではない。
幾度も語られ、複数の目撃者によって確認されていることから、そこには意志を持つ何者かが棲みついていると考えざるを得ない。
曲坂は、ただの坂道ではない。
夜、その地を通る者には、今もなお、静かに、だが確実に近づいてくる“何か”が存在している。
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