山口県周南市にひっそりと佇む「戻路大番社」。かつて神聖な神事が行われていたこの地には、いまなお人々が近づくことをためらうような不可解な現象が報告されている。今回は、戻路大番社にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
戻路大番社とは?

戻路大番社(もどろおおばんしゃ)は、山口県周南市中須・戻路に位置する廃神社である。
祭神は大山祇神(おおやまずみのかみ)と水波女神(みずはのめのかみ)であり、かつては自然信仰に基づいた厳かな神事「水ためしの神事」が毎年11月25日に執り行われていた。
その神事は、小餅12個(閏年は13個)、酒1合、小鯛2匹を素焼きの壺に入れて地中に埋め、翌年、供物が水となってどれほど溜まっているかで翌年の干ばつの有無を占うというもの。
神域の静けさと神事の神秘性から、この場所はかつて女人禁制とされ、特別な結界の内にある“異界”と見なされていた。
土砂災害により周辺は荒廃し、道は倒木と崩落により断たれているにもかかわらず、不思議なことに神社本体はまったく無傷のまま、かつての姿を保ち続けている。
まるで、何者かの意思によって守られているかのように。
戻路大番社の心霊現象
戻路大番社の心霊現象は、
- 老爺の霊が現れる
- 女子禁制の結界により、女性にだけ異変が起こる
- 墓地もないのに人の気配が聞こえる
- 神社周辺だけ空気が異様に冷たく感じられる
である。以下、これらの怪異について記述する。
この神社で最も知られている心霊現象が、「老爺の霊」の出現である。
夕暮れ時、朽ちた鳥居の付近に杖をついた老人が佇んでいるのが度々目撃されている。
しかし声をかけても返事はなく、数秒後にはその姿は消えてしまうという。
彼がこの神社の神事を担っていた当屋なのか、それとも祟り神の化身なのかはわかっていない。
また、戻路大番社には現在も「女子禁制」の風習が根強く残っている。
実際に女性が訪れると体調不良を訴えたり、何者かの視線を感じたり、足を取られて転倒するといった報告がある。
まるで“女の穢れ”を嫌う何かが、目に見えぬ力で排除しようとしているかのようである。
さらに、誰もいないはずの境内で人の話し声や足音が聞こえるという現象も多く報告されている。
特に夜に近づくと、どこからともなく木々のざわめきとは異なる「低く湿った声」が聞こえることがある。
これはこの場所に眠る“見えざる存在”が、何かを訴えている証なのかもしれない。
極めつけは、神社周辺だけが異様に冷えているという事実である。
夏場でも涼しいというレベルではなく、明らかに冷気が肌を刺すほどの異常さで、長くとどまると吐き気を催すという人もいる。
まさにここは“神域”であり、人の世と異なる何かが息づいている場所なのだ。
戻路大番社の心霊体験談
実際にこの神社を訪れた者の証言によれば、県道8号沿いにぽつんと建つ鳥居を目にしたときから、すでに空気の異変を感じたという。
鳥居は朽ちかけ、片側が欠けている。
足を踏み入れたとたん、鳥の声も虫の音も止み、まるで音のない空間に取り込まれたかのような感覚に襲われたという。
境内に向かって歩いていく途中、背後から誰かがついてくるような気配を感じたが、振り返っても誰もいなかった。そのまま進むと、唐突に視界の端に白髪の老爺の姿が映ったという。
瞬きした瞬間にはもういなかったが、その後もしばらく悪寒と動悸に襲われたそうだ。
戻路大番社の心霊考察
戻路大番社は、単なる廃神社ではない。廃れてなお残る「水ためしの神事」、朽ちた鳥居、女人禁制の名残、そして神域を守るかのような冷気。
これらはすべて、今もなお神域としての力が働いている証ではないだろうか。
老爺の霊が現れるのも、この神社の神事や結界に深く関係していると考えられる。
現世と異界の狭間に位置するこの場所は、神の領域に踏み込んだ人間に対し、その結界の意味を改めて警告しているのかもしれない。
音なき世界、冷たく沈黙した空気、人知れず現れる者。
これらすべてが、戻路大番社が“神域”として未だ機能していることを物語っている。
無闇に立ち入れば、目には見えぬ力の怒りを買う恐れもあるだろう。
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