「お菊井戸」は、播州皿屋敷の怪談に登場する場所であり、兵庫県姫路市に位置する古い井戸である。この井戸は、忠義のために命を落としたお菊の霊が投げ込まれた場所とされ、以後、恐ろしい心霊現象が繰り返し報告されている。特に「1枚、2枚、3枚…」と皿を数える女性の声が聞こえる現象が有名である。今回は、お菊井戸にまつわるウワサの心霊話を紹介する。
お菊井戸とは?

お菊井戸は、兵庫県姫路市の姫路城本丸下「上山里」と呼ばれる一角に存在する古井戸である。
この井戸は、日本三大怪談の一つ「播州皿屋敷」の舞台として知られ、悲劇のヒロイン・お菊が命を落とした場所とされている。
永正年間(1500年頃)、姫路城主・小寺則職の執権である青山鉄山が、家臣の町坪弾四郎と共謀して城の乗っ取りを企てていた。
この陰謀を探るため、則職の忠臣・衣笠元信は、想い人であったお菊を青山家に女中として送り込んだ。
お菊は城主暗殺計画を知ると、元信にその事実を伝えた。則職はこの情報のおかげで暗殺を免れたが、城は鉄山の手に落ちてしまった。
弾四郎は、お菊を助ける代わりに結婚を迫るが、お菊はこれを拒否する。
逆上した弾四郎は、青山家の家宝である十枚揃いの皿の一枚を隠し、罪をお菊に着せた。
厳しい責め苦に耐えながらもお菊は決して屈しなかったため、ついに斬り殺され、井戸に投げ込まれてしまった。
お菊井戸の心霊現象
お菊井戸の心霊現象は、
- 井戸の中から女性のすすり泣く声が聞こえる
- 夜になると「1枚、2枚…9枚」と皿を数える声が響く
- 井戸の周りに白い着物の女性の姿が現れる
- 井戸の底から突然水が湧き出ることがある
- 近づくと急に冷気を感じる
である。以下、これらの怪異について記述する。
お菊が非業の死を遂げた後、夜ごと井戸の中から「1枚、2枚…9枚」と数える声が聞こえるようになった。
この現象は長らく続き、人々は恐れを抱いたという。
声を聞いた者の中には、その後高熱にうなされる者や、原因不明の体調不良に見舞われる者もいた。
また、夜中に井戸を覗き込むと、白い着物を纏った女性の影がゆらめくのが見えたという証言もある。
井戸の底から何かが這い上がるような気配を感じた者もおり、その場を離れると足元に水滴が落ちていたという奇妙な体験も報告されている。
さらに、井戸の周囲に立つと突然寒気を感じることがあり、まるで誰かに見つめられているかのような錯覚に陥ることがある。
霊感の強い者は、井戸のそばに立つだけで重い気配を感じるとも言われている。
お菊井戸の心霊体験談
ある夜、肝試しのためにお菊井戸を訪れた若者たちがいた。
井戸の前で冗談半分に「1枚、2枚…」と声を出したところ、途中から聞こえるはずのない女の声が重なった。
驚いた彼らはその場を急いで離れたが、翌日、そのうちの一人が高熱を出し、一週間もの間うなされ続けたという。
また、ある女性が昼間に井戸を見学していた際、ふと目を閉じた瞬間に「助けて…」というか細い声を耳にした。
慌てて辺りを見回すも、周囲には誰もおらず、後に写真を確認すると、井戸の奥に白い影のようなものが写り込んでいたという。
お菊井戸の心霊考察
お菊井戸にまつわる怪異は、日本の怪談の中でも特に有名であり、心理的な影響によるものとも考えられる。
しかしながら、実際に皿を数える声を聞いた者が後を絶たず、今なお噂が絶えないことから、単なる伝説として片付けるには不気味な要素が多い。
また、お菊の怨念が現在まで残り続けていると考える者もおり、彼女の無念の思いが強く、この世に未練を残している可能性がある。
歴史的に見ても、女性が不条理な扱いを受け、悲劇的な最期を遂げる話は多く、その中でもお菊の物語は特に悲哀に満ちている。
現代では、井戸が観光名所として訪れやすい場所になっているものの、夜間に訪れるのは避けたほうがいいだろう。
そこには、今もなお、お菊の声が響いているかもしれないのだから。
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